ジュエリーコンシェルジュ原田信之

原田信之 所有されているジュエリーの活用方法をアドバイスする株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリー JAAG(ジャーグ)の代表のブログ。オークションの査定や百数十回に及ぶ宝石の海外買い付け、ジュエリーのプロデューサーとしての経験を生かして、相続や売却、資産性のある宝石の購入のアドバイスをします。

HPHT処理ダイヤモンド

ムンバイの市場にもHPHT(高温高圧)処理によって色が改良されたダイヤモンドが無処理に混ざって市場に出始めました。
ディーラーが知らないで扱っているケースが殆どなので、信頼関係が出来ていても安心できません。
0.2カラット程度からも確認されていますので、処理費用がそれ程高くないことが想像されます。
原石の時点で処理が施されていると言う研磨業者もいますので、ますますトレーサビリティ(追跡可能性)が重要になっています。


ある日のランチ







私がムンバイにいるときに食べているランチです。
私向きにかなり辛さを抑えて、甘い食材を使っていただいています。
今日は3つのカレーです。
左上は、キャベツのカレー
下は、青いトマトのカレー(大好物!)
右上は、今回特別に作ってもらったグァバのカレーです。
インドでは殆どの食材はカレーになります。
しかし、甘いフルーツとカレーは少し微妙でした。

グァバカレー拡大

グァバカレーの拡大です。
本当にグァバです。



続 ムンバイ 買い付け

放射線でファンシーカラーのような色をつける処理は、私が業界に入った頃から行われているので既に珍しいものではありません。
ここムンバイでも最近、同様の処理石が多く見られるようになって来ました。
ティーラーに尋ねると、専門業者に依頼して3日で上がってくると言うのを聞いて驚きました。
恐らくカルカッタあたりで処理しているのではと言うことです。
現在は分かりませんが、以前問い合わせたところでは、アントワープでも米国に送って処理しているとの事でした。
放射線の施設のことは、分かりませんが、インドの核開発が連想されて、少し怖い気持ちになりました。
費用は、1カラット当たり25US$で出来るそうです。


放射線処理ダイヤモンド







これが処理されたダイヤモンドです。
サイズは0.25〜0.7カラットです。
その会社の技術レベルによりますが、殆どの色が可能です。
以前は、この処理石のように如何にも怪しい色合いでしたが、
現在は天然のファンシーカラーと一目では見分けがつかないものになっています。
特に費用の点で鑑別を行わないメレーサイズは、問題です。


放射線処理前ライトブラウン







処理前のライトブラウンのロットです。
元が無色でしたら、もっと綺麗な色にあがりますが、
処理石に元手をかける業者は多くはありません。
因みに無色の高品質のものと比べると5分の1程度の価格です。



放射線処理 前と後







処理前と処理後のダイヤモンドをフェイスアップで並べてみました。

メレーサイズの綺麗なピンクやブルーは、天然と放射線処理では価格が100〜200倍、場合によってはそれ以上違います。
本来、全く別に扱われる商品です。
我々業者は、traceability(追跡可能性)のしっかりした仕入れを行うことが第一です。


ムンバイ 買い付け

今年に入って初めてのムンバイです。
この時期は、まだ雨季の真っ最中ですが、今年の7月は雨量が少なく農作物への影響が心配されます。
こちらはモンスーン気候と呼ばれるもので、日本の梅雨のようにしとしと長く降ることはありません。
但し、降り出すとバケツではなくバスタブをひっくり返したように降ります。
雨がどのくらいで降りだすかは、少し高い建物から空を見渡すと簡単に予想できます。
遠くから黒い雲が近づいてきて、暫くすると雨の柱が見えてきます。
局地的に猛烈に降るので起きる現象です。


取扱量で世界屈指のダイヤモンドマーケットのムンバイ(ボンベイ)のマーケットは重たい空気に包まれています。
それはまるで、出口の見えない洞窟の中を彷徨っているようです。
川上の原石供給がDTC(De Beers)の独占から数社による寡占状態に移行して行くに過程で研磨業者、ジュエリー製造業者、小売店の垂直的な統合の動きが起こり、今までと異なる流れに小規模業者は戸惑っています。
結果、生き残りをかけて熾烈な価格競争が起きて、利益を削りあう泥沼状態です。
更に、原石価格の高騰、現地通貨ルピー高、資源価格の高騰によるコスト増加に加えて、需要の半分を担っている米国市場が足踏み状態に入っていることが、状況を悪くしています。

長らく実現が危惧されていたムンバイ初の本格的なダイヤモンド取引所「BDB(Bharat Diamond Bourse)」が終に今年の10月にオープンします。
これだけ大きな取引が行われているにも拘わらず、セキュリティの完備した取引所が無かったことが不思議ですが、計画を聞いてからどの位経ったか忘れたぐらい昔のことが実現するのは悠久の国インドならではです。
現在のオペラハウスの主に2つビルに入居している業者が移るのは、来年の中ごろだと予想されています。
空港からは、近くなりますが、ホテル等のインフラが遅れているのとダウンタウンからの道の渋滞が酷く、問題は山積しています。
これもインド時計でゆっくり解決していくのでしょう。

記念に現在のオペラハウス周辺の屋台の風景を残しておきます。
新しく出来る取引所では見られなくなるでしょう。
どれも食べたことはないので、味の説明は出来ません。


煎りピーナッツ

燃えさしで煎ったピーナッツを売っています。
よくブローカーがポリポリしています。
これは、美味しいそうです。




サトウキビジュース

およそ清潔とは縁のない環境です。
モーターでサトウキビを搾って出しています。
手前に見えるのが搾りかすです。
火が通っていないので、これを飲むのは勇気が要ります。




インド版超B級ベジタブルピザ

パパドウの上に野菜がのっています。
「インド版超B級ピザ」と言うところでしょうか。





良く分からない食べ物

これは良く分かりません。





この他にタバコを1本から売っているキオスクのようなお店や「パン」と呼ばれる葉っぱにくるんで石灰と一緒に紙タバコのように味わう嗜好品の屋台等があります。
この手の話は、インドの旅行者の方が詳しいので詳しく正確に知りたい方は、そちらをご覧ください。

続 フローレスは買わない

6月27日のブログで「フローレスは買わない」と書きました。
では、では具体的にどんなものを買ったら良いのかというお問い合わせをいただきました。
今日は、クラリティーによる価格差から考えたいと思います。

例えば、1カラットサイズのD color, Internally Flawless(IF)を100%とすると同じDカラーでクラリティーグレードの違いでどんなに価格差があるのでしょうか。

現在、買い付けの際、国際的にベースになっている比率を紹介します。
実際は、透明度や欠点の有無やプロポーション等の要素が考慮され、個々のプレミアムが異なりますので多少前後します。

IF   :100%
VVS1 :71%
VVS2 :64%
VS1   :51%
VS2  :46%

これで分かるように、VS2はIFにいたいして46%、つまり2.15倍の価格差があります。
SIクラスと比較すると更に差が大きくなりますが、SIクラスは品質の幅が大きいので、ここでは、VS2までとします。
ダイヤモンドでは、IFからVS2まで5段階にも分かれますが、ルビーやサファイアでは同幅の不完全性は、ほぼ無傷として扱われ、これだけでは差がつきません。
エメラルドに至っては、これほど不完全性が少ないものは、殆ど皆無です。
もし、この差が2割や3割でしたらInternally Flawlessもお勧めできます。


では、現在1カラットサイズのDカラーのInternally Flwalessと同額で同じDカラーでVS2ならば、どの位の大きさが買うことが出来るでしょうか。
(サイズが上がると1カラット当たりの単価も上がりますので、このチャートだけでは算出できません)

答えは、1.6カラットサイズです。

何だ、その程度かと思われますか。

実は、重量では大きく差がつかないように思われますが、見た目の大きさは大きく異なります。

直径では、1カラットサイズは、約6.5ミリですが、1.6カラットサイズは、約7.6ミリになります。
これは、2カラットサイズの8.2ミリにかなり近くなります。

因みに、ラウンドブリリアントカットの場合、1.5カラットや2.5カラットの中間サイズは、下のサイズより上のサイズに見た目の大きさが近くなります。
お買い得なサイズと言うことになりますが、研磨業者は原石から出来るだけ大きなサイズを研磨しようとしますので、1.5カラットは2カラットに2.5カラットは3カラットに多少深くなっても仕上げますので、実際は市場に少ないサイズです。


私や私の周りのプロの人たちは、同じ金額でしたら殆どが1.6カラットサイズを選びます。
但し、これには、そのダイヤモンドは、美しさや耐久性に与える欠点がないことが前提です。

また、ダイヤモンドのカラーは大きくなればなるほど差がはっきりしますが、1カラットぐらいでは、Dカラーに拘る必要はないと考えるプロは少なくありません。
カラーの稀少性を下げると更に大きなダイヤモンドの購入が可能です。

私は、宝石に関しては「小さな葛篭(つづら)」より「大きな葛篭」が好きです。

皆さんは、どちらの葛篭がお好きでしょうか。



資源メジャーとダイヤモンド

本日の日本経済新聞によると、

英豪資源大手リオ・ティントは12日、カナダのアルミ大手、アルキャンを買収することで合意したと発表した。
買収額は381億ドル(4兆6500億円)。
両社のアルミ地金生産量は合計で420万トン強に達し、統合後は世界首位に躍り出る。これを機に世界の資源大手の再編が加速する可能性もある。
現在、資源メジャーと言われているのは、英豪系の「リオ・ティント」、同じく英豪系の「BHP Billiton」、英「アングロ・アメリカ」の3社に加えて、ブラジルの「CVRD」、スイスの「エクストラータ」。
また、リオ・ティント自身もアルキャンを買わなければ、BHPの標的になったとの見方出ている。

アルミ業界の再編に関する記事ですが、ダイヤモンドの世界にも無縁ではありません。
ダイヤモンド原石の将来の主導権を誰が握るかを左右することですらあります。

上記の記事のように資源メジャーと言われている会社の中で、現在ダイヤモンドの原石で高いシェアを持っているのは、DTC(De Beers)の親会社の「Anglo American plc」、オーストラリアのArgyle鉱山とカナダのDiavic鉱山の他ジンバブエにも鉱山を持っている「Rio Tinto Zinc」、カナダのEkati鉱山の「BHP Billiton」の3社です。
その他は、会社ではありませんが、「Russia」に加えてイスラエル人の「Lev Leviev」氏率いるグループがあります。
正確にはわかりませんが、シェアはDTCが40〜45%、Russiaが20%前後、残りをRio Tinto Zinc、BHP Billiton、Lev Levievが分け合ってその他は10%未満と思われます。

もし、新聞記事のようにBHPがLio Tintoを買うようにことになっていたら、DTC、Russiaに続く勢力が生まれて、構図がすっかり変わっていました。

ダイヤモンドの価格は、長いことDe Beers(DTC)1社が制御してきましたが、
1995年 ロシア産原石の独占販売終了
1996年 Argyle鉱山(Rio Tinto Zinc)カルテル離脱
1998年 3 grainer(0.75ct)以下の原石(研磨済み0.2ct)の価格調整放棄
1998年 カナダEkati鉱山(BHP Billiton)ダイヤモンド原石をDe Beersに供給(2002年終了)
2000年 De Beers原石価格調整全面的放棄
2001年 カナダDiavic鉱山(Rio Tinto Zinc)本格稼動
と独占が崩れてきました。

最近では、各グループの原石販売が入札制に変わり、需給を反映したものになってきました。
入札制と世界的な所得の格差によって生まれた高額品の需要が重なった結果、大粒で稀少性の高いダイヤモンドの価格の高騰が生まれています。

これからも、川上の動きに目が離せません。




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