ジュエリーコンシェルジュ原田信之

原田信之 所有されているジュエリーの活用方法をアドバイスする株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリー JAAG(ジャーグ)の代表のブログ。オークションの査定や百数十回に及ぶ宝石の海外買い付け、ジュエリーのプロデューサーとしての経験を生かして、相続や売却、資産性のある宝石の購入のアドバイスをします。

ジュエリーアドバイザーの仕事帖

Pandemic drop 2020

−パンデミックの年、ダイヤモンドマーケットに何が起こったか−
 2020年3月、De Beersは史上初めてSight(原石販売会)を中止しました。新型コロナウイルスの世界的感染拡大で移動が制限されたことにより、一カ所に購入者を集めての販売が出来なくなったためです。この危機を受けて大手鉱山会社は「量より価格」と言う戦略をとり、顧客である研磨会社を支援して約20%の減産を行うとともに原石購入の延期を許可しました。そして需要が回復した第3四半期には原石価格を約10%引き下げました。原石会社、研磨会社共に収益が減少し原石価格は約11%下落しましたが、戦略が功を奏して研磨済み価格は3%しか下がりませんでした。原石の販売方法も顧客の多いアントワープやテルアビブに原石を送っての検品やオンラインによる販売、オークションなども試みました。今後感染が収束してもこのような移動を伴わない販売方法がある程度定着すると思われています。
Rough diamond price index and polished diamond price index

Annual production by value, $ billions

ダイヤモンドの生産量は2017年をピークに年平均5%減少し2020年は前年比20%減少しましたが、2021年には前年に休止していた鉱山の再開により2019年並に回復すると期待されています。しかし2020年にオーストラリアのアーガイル鉱山が閉鎖されたため、その増加分も相殺されることを考えると大きな増加は難しいでしょう。
Annual production million carats

 長くダイヤモンド研磨の量、金額共に圧倒的なシェアを占めているインドは2020年に原石の輸入量が23%減少したにもかかわらず、世界の研磨済みダイヤモンド製造の約95%(重量ベース)のシェアを維持しました。高品質なダイヤモンド価格の回復が顕著でこのカテゴリーを研磨している研磨業者が最も恩恵を被りました。
Net import of rough diamonds

 世界のジュエリー市場はロックダウンによる店舗の閉鎖や結婚式のキャンセル等で打撃を受けましたが、消費抑圧の反動やその他のラグジュアリー消費(旅行、体験)の代替、オンラインビジネスの拡大によって15%の減少にとどまりました。
中国市場は感染の抑え込みに成功し、経済が世界に先駆けて回復して前年比マイナス6%と健闘しました。ロックダウンが解除されると海外旅行の禁止により国内消費が興隆しSNSやオンラインストアでの販売、海南島での免税販売が急増しました。
米国市場はロックダウンの延長や制限が行われて第2四半期に株式市場が暴落し、失業率が15%まで悪化したためジュエリーの売り上げは一時40%以上落ち込みました。その後、政府がリーマンショックを大幅に上回る大型経済対策を迅速に発動したことにより雇用率が改善、加えてワクチンの普及による制限解除で第3四半期のホリデーシーズンにはジュエリー需要が急速に回復しました。日本、ヨーロッパ、インド、中東が軒並み20%以上落ち込む中、米国のジュエリー市場は対前年比マイナス15%に踏みとどまりました。
Global diamond jewelry market,


グラフと文中データはBAIN & COMPANY The Global Diamond Industry 2020–21より

ジュエリーアドバイザーの仕事帖

トライアル・アンド・エラー
「全くダメ!」と思わず声に出そうになりましたが、作ってくれた職人を前にし、言葉を飲み込みました。私の細かなディレクションに沿って職人は忠実に仕上げてくれたのでイメージ通りになっていない結果責任は自分にあります。その場は職人に感謝の意を伝えて作品を受け取りました。
 ファンシーシェイプダイヤモンドの美しさの大きなポイントは綺麗な輪郭です。美しく輝くのは当然ですが、せっかくのバランスの取れた輪郭が分からなければ意味がありません。受け取ったリングではメインストンである2カラットサイズのペアーシェイプの輪郭が周りの輝きに同化して分からなくなっていました。輝きを連鎖させてより大きな輝きを作り出すと言う意図でしたら成功ですが、この場合はファンシーシェイプの魅力が発揮されていません。
106x9 ( 2.02ct)

 悔しさから別のデザインで再挑戦しました。2カラットサイズのオーバルシェイプのダイヤモンドをマーキスシェイプのダイヤモンドで取り巻いたデザインです。マーキスシェイプの一つ一つがはっきりと分かるように適度な間隔で配置し、メインストンも間が抜けない程度の隙間を作って留めました。
しかし、結果は「またダメ!」。前回より少しは良くなりましたがメインストンが生きていません。
122x0

 そして懲りずに三度目の挑戦。1.5カラットサイズのハートシェイプのダイヤモンドの周りにペアーシェイプのダイヤモンドをあしらいました。
・・・「今度もダメ!」でした。ハートシェイプは元々ラウンドに近いため取り巻きの中で輪郭をはっきり出すのは難しいのですが、周りを比較的大きなペアーシェイプにしたため強弱も付かず埋もれてしまいました。
130X1

 三敗を喫した後は心機一転、小粒のメレーダイヤモンドでペアーシェイプのダイヤモンドを取り巻いたリングを仕立てました。メレーダイヤモンドは小粒でも良く輝くシングルカットを採用し、メインストンと絶妙な隙間を作って石留してあります。今回はバランスの取れたペアーシェイプの美しい輪郭がはっきり分かり、小粒のメレーダイヤモンドが品の良い豪華さを与えてくれています。
134X9-1

 ファンシーシェイプの輪郭を際立たせる一般的な方法は異なる輝きのダイヤモンドを組み合わせることです。下の写真ではクッションシェイプのブリリアントカットにバケットシェイプのステップカットを組み合わせることでダイヤモンドだけのジュエリーにもメリハリが出ています。
109X7(CU 3.01)

 ブリリアントカットのファンシーシェイプダイヤモンドを比較的大きなブリリアントカットで取り巻くことに挑戦してきましたが、仕上がりに納得出来なかった3つのリングが手元に残りました。その内、一つ目のペアーシェイプダイヤモンドリングは改良の余地がないので解体しました。あとの2つのリングはそれぞれオーバルシェイプダイヤモンドをルビーに、ハートシェイプダイヤモンドをエメラルドに、カラーストンをメインにして留め変えたところ、魅力あるリングとして見事に蘇りました。そして外したハートシェイプダイヤモンドはソリテールタイプにディレクションし直し、元々の際だった綺麗な輪郭を浮かび上がらせました。
122X0-1
130X1-1
130X5

 宝石の美しさを引き出すためには輝きの大きさや種類を組み合わせることが大切です。これまでジュエリーをたくさんプロデュースしてきましたが、中にはここで取り上げたような失敗例もあります。納得のいかなければコストがかかっても妥協せずに作り直す勇気を持つように努めています。私の失敗がこれからジュエリーをプロデュースする方の参考になれば幸いです。


あなたの知らないオークションの世界

オパールリング

「悔しい、嬉しい!」
 「4万円、4万2千円、4万4千円」オークショナーが2千円単位でせり上げる。3-4人が一緒に競っている。私もパドルを上げて応戦する。5万円を超えるとプロの人たちが降りた。残ったのは一般のご婦人一人。「6万円・・・7万円・・・8万円」えっまだ上がるの。その日は落札する気満々で参加していたが、予期しない上がり方に焦りを覚える。好みの宝石にプロらしくなく熱くなって追随。更に上がって「9万円、9万8千円」ご婦人に降りる気配はない。もう駄目。さすがにこれ以上はプロとしては出せない。結局私が諦めてご婦人が10万円で落札した。参加する前は5万円も出せば落札出来ると踏んでいたので思わぬ伏兵の出現に大誤算だ。
 実はこのロットは私が依頼者から預かって出品していたものだ。プラチナ台に1.5ctほどのオーバルカボションのウオーターオパールをダイヤモンドで取り巻いた典型的な昭和のデザイン。お預かりしたときにそのオパールの美しさに一目惚れしてしまった。ウオーターオパールとしては滅多に見ない透明度とブルー、グリーン、オレンジの鮮やかな遊色に目が釘付けになった。私がメインに購入するのはダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドの大粒だが、その他のカラーストンでも飛び抜けた品質のものは価格が高い安いに関わらず欲しくなる。
 元々は宝石バイヤーなので、プロ相手となると1ドルでも安く手に入れるために粘り強く交渉するが、一般の方が相手の場合は買い叩くことはしないと決めている。自分がお預かりした商品の中に欲しいものがあってもオークションに出品して他の買い手と一緒に競る事にしている。そこはオークション、買えることもあれば前述のように買えないこともある。プロ同士ならば、このくらいなら買えるだろうと高を括っていたところ、相場を気にしない一般の方の出現に想定を覆された。満足気に席を立たれたところをみるとご婦人はこのロットだけを競りに来たらしい。相手が悪かった。一般の方でも見る目がある方はいるものだと感心して自分を慰めた。
  もっとも、売却の依頼者にとっては願ってもない結果となった。もし依頼者が巷の買い取り店で売却していたら、ほぼ地金価格プラスアルファで3万円未満となっていたところだが今日のオークションでは手数料を引いても8万円以上を手にしたことになる。約3倍だ。これぞオークションの醍醐味であり、図らずも私もその一役をかった結果となった。
 今回は10万円程度だが、これが数百万円でも数千万円でも想定以上の落札結果となった実例は多数ある。依頼主が少しでも真っ当な価格を手にし、喜んでくれることがアドバイザーとしての本懐だ。
Brand Jewelry International連載


SUWA公式オンラインショップスタート

news

諏訪貿易株式会社が展開しているSUWAブランドジュエリーの公式オンラインショップが本日よりスタート

特徴は完全オーダー!でもただの受注生産とは違います。

ジュエリーコンシェルジュがピックアップした
SUWAの完全オーダーの3つの安心!

1.その人にあったサイズで作るのでリングに負荷がなくバランス良く仕上がり、耐久性も高くなりますので既製品のサイズ直しとは違います。しかも、2年間と言う長い無料修理保証がついてくるので思わぬ修理が発生しても安心です。サイズが合わなくなっても大丈夫。エタニティーリング(全周リング)も対応なんて太っ腹です。

2.大自然が生み出した宝石は一つ一つが異なりますので、厳しい品質管理をしていても厳密にはジュエリー毎に僅かな違いがあります。SUWAの完全オーダーでは製作に入る前に裸石で確認が出来ます。納得してから買い物が出来るので安心です。
このような裸石のメールが事前に届きます。

loose

このリングの裸石です
K75454DIRU


3.ご購入の前に現物を確認したい場合は専用フォームから申し込んでお近くの取扱店で確認してからオーダーすることも出来るので安心です。試着してから直接オンラインショップで注文することも、そのまま取扱店で購入することも出来て便利です。お馴染のお店でしたらポイントもゲット出来るので嬉しいですね。

その他にケースの選択や日付や文字の打刻のサービスもありますので、ご婚約等のプレゼントにも対応しています。

詳しくはホームページでご確認ください。
オンラインショッピングガイド



ジュエリーアドバイザーの仕事帖

Minimum Metal、Maximum Gemのジュエリー上面

「ジュエリーは壊れる」
 「なぜ、リングの地金をこんなに厚く作るのですか?」「ヨーロッパのジュエリーのようにもっと繊細に作ったほうがエレガントではないでしょうか?」とまだ若かった私は怖いものなしで、当時すでに日本のジュエリーデザイナーのトップに上り詰めていた方に詰め寄りました。「これでいいのよ。日本のユーザーはこのくらい丈夫に作らないと直ぐに変形させてクレームになるの。ヨーロッパのユーザー並に扱いを分かっている人は限られているから。」と冷めた回答が返ってきました。若造ながら日本のマーケットを知り尽くしている業界の先輩の言葉に違和感を抱いたことを今でも鮮明に覚えています。
 ヨーロッパは伝統的に階級社会であり、ジュエリーを購入する層はある程度のクラスに属していてジュエリーのTPOや扱い方に精通しています。翻って日本はジュエリーの歴史が浅く、扱い方に慣れていない方が多いのも事実です。郷に入っては郷に従えとは言いますが果たしていつまでもその考え方のままでよいのでしょうか。
 確かに結婚指輪に代表される貴金属メインのジュエリーは何十年と着けっぱなしにする人がおり耐久性が必要とされます。一方、宝石がメインのジュエリーではどうでしょう。宝石の美しさを引き出すためには宝石を支えている貴金属が少ないことが理想とされます。これがMinimum Metal(ミニマムメタル)Maximum Gem(マキシマムジェム)の考え方です。もちろん身につけたら直ぐに壊れて宝石が外れるようでは困りますので、最低限の耐久性は必要です。大切なのはジュエリーの中には美しさを引き出すために工芸作品のように繊細なものがあり、そう言ったジュエリーの扱いには注意が求められると言うことです。
Minimum Metal、Maximum Gemのジュエリー裏面
Minimum Metal Maximum Gem

 ジュエリーが壊れて売り場に持ってくる方の多くが「何もしていなのに壊れた」とおしゃります。ジュエリー自体の耐久性に問題があることもありますが、マジックではないので何もせずに壊れることはありません。誤解を防ぐためにも販売時には「扱いによってはジュエリーは壊れます」とはっきり伝えることです。作業時には外すのは当然のことながら、意外なケースとしては両手にはめたリング同士が拍手することで当たって変形すると言った事例があるのも覚えておいて頂きたいところです。とは言っても腫れ物に触るように扱う必要はありません。使っていて自然につく擦り傷程度なら磨き直せば殆ど元に戻るので神経質になることはありません。  
 万が一壊れてしまったとしても殆どの場合修理は可能です。プラチナやゴールドで作られるのは腐食しづらい事だけでなく修理が容易な点も理由です。特にプラチナは宝石の装身具の素材として優秀です。粘性が高いために宝石を留めた爪が外から衝撃を受けても摩耗せずに伸びて宝石をホールドし、直ぐに外れるのを防いでくれます。
プラチナの爪が衝撃で伸びる(使用前、使用後)
プラチナの爪が衝撃で伸びる(使用前、使用後)

世代を超えて楽しめてこそジュエリーです。大切に使って長い間宝石の美しさを堪能して頂きたいと思います。
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原田信之

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