ジュエリーコンシェルジュ原田信之

原田信之 所有されているジュエリーの活用方法をアドバイスする株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリー JAAG(ジャーグ)の代表のブログ。オークションの査定や百数十回に及ぶ宝石の海外買い付け、ジュエリーのプロデューサーとしての経験を生かして、相続や売却、資産性のある宝石の購入のアドバイスをします。

あなたの知らないオークションの世界

オークション下見会会場small

 どうしたら宝石やジュエリーの善し悪しや相場が分かるようになるのだろうか。宝石店を回ってもショーケース越しに覗くのは勇気がいる。気になったものを試しに出してもらって手に取ったらいつの間にか買う羽目になっていた経験をした人にはトラウマだ。では講座を受ける?学校に入る?何れにしてもかなりの費用がかかる。
 費用が殆どかからない絶好の場所がある。それは宝石オークションの下見会だ。ネットオークションと異なりライブのオークションはオークション2、3日前に手に取ってジュエリーを見ることができる下見会が開催される。下見会には原則として誰でも入場することが出来る。下見会の良いところは販売の為ではなく純粋に下見なのでジュエリーを気軽にチェックすることが出来る点だ。それに一般の宝石店ではそれぞれのお店の格で品質は揃っているので比較は難しいが、オークションの下見会は品質が様々で、善し悪しの比較ができるのが特徴だ。
 下見会に参加するには、オークション会社に電話するかホームページから申し込んでカタログを入手することが第一歩。下見会の場所、日時を確認して、それまでにカタログをチェックする。お目当てのジュエリーを落札したい場合はそれだけをチェックすれば良いが、ジュエリーをより深く理解したい場合は全てのロットの写真と記載されているデータを丹念にチェックして出来るだけ多くの商品を下見会で手に取って確認したい。
 ここで大切なのは何でも良いから本気で買うことだ。金額は問わないが購入する目的を持つことで力がつく。例え欲しいものが無くても「掘り出し物」を探すだけでもいい。オークションの良いところは落札して手に入れた物も相場が変わらなければ原則として同じリザーブ価格(最低落札価格)で再度出品できることである。もし手に入れた同額で落札されれば手数料分はなくなるが勉強代としては安い物だ。一般の方でもオークションで手に入れて飽きたら再出品し、他のものを手に入れることを繰り返している上級者もいる。一定額をジュエリー購入に充てると考えれば、今はやりのサブスクリプション的な使い方だ。
 ここからは下見会に欠かせない七つ道具を紹介しよう。10倍のルーペ、ペンライト、紫外線ライト(ブラックライト)、ピンセット(ルース用)、ノギス(無ければ定規)、宝石用クロス(めがね拭きでもOK)、計算機。これらを宝石店に持ち込むことは失礼で出来ないが、下見会では問題ない。下見会は一般的に一日中行っていているので、時間を取ってじっくり見たい。

オークション下見会ディスプレイsmall

 まず、ショーケース越しに見てカタログの画像と比較する。オークションカタログの画像は実際の色や寸法に近くするのが基本だが最近は実物より良く見せる傾向があるので確認が必要だ。下見会場によるが自然光で見ることができるスペースが用意されているところは是非活用したい。特にスペースを設けていない会場でも気になるロットは係に窓辺でチェックしたい旨を伝えて見ることも可能だ。宝石は光源によって見え方が変わるので自然光、蛍光灯、白熱灯、LEDとで微妙に異なる。
 次に手に取って重量を確認する。重さから耐久性や装着性をチェックする。例えばブローチの重い物は要注意だ。日本は温暖化で服装が薄くなっているので重すぎるものは使えないことが多い。
 この後はルーペを使うので、事前に使い方をマスターしておこう。レンズを親指と人差し指で挟んで、ルーペのレンズにかかるかかからないかぐらいのところを中指で支える。ジュエリーを中指につけて覗くとピントが合う。10倍のルーペでは約指一本分が焦点距離だ。ジュエリーを宙に浮かせずルーペと中指で固定することがこつだ。焦点が合ったらルーペを出来るだけ利き目に近づけて視野を広げる。片目で作業を続けると疲れるので両目を開けて出来る訓練もしたい。
 ルーペが使えるようになったら、初めに刻印をチェックする。刻印情報を掲載しているカタログもあるが掲載されていない情報もあるので横着せずに自分で確認しよう。刻印には使われている貴金属の種類と品位、使われている宝石の石目方、メーカーやブランドのマークやシリアル番号等が打たれている。情報も大切だが丁寧に刻印されているかも重要だ。品質の高いジュエリーは刻印も綺麗なものが多いが、品質の低いジュエリーで刻印が綺麗なものは殆どない。メーカーの刻印は特定できなくても打たれていることでメーカー責任を取る姿勢が見えるのである物の方が比較的安心だ。白い地金はプラチナの場合とホワイトゴールドがあるが、ホワイトゴールドにはロジウムメッキが施されているので傷ついてメッキがはげる場合があることを承知しておきたい。ブローチやペンダントは傷むことが少ないので大柄なものはプラチナを避けて比重が軽いホワイトゴールドで作ることがある。
 紫外線ライトは簡易な鑑別に使えるので我々プロには必須だ。例えば、ダイヤモンドは蛍光を発するものが多く存在しており、稀にその中で特別に強いものが肉眼でも濁って見えることがある。蛍光の程度と肉眼で見たギャップを自分で確認してもらえば、殆どが影響のないことが分かる。そうすることでレポートにストロングブルーと記載があるだけで忌み嫌うことはなくなる。
 宝石の内部をルーペで拡大して善し悪しを見分けるのはプロの領域だが、表面の傷や内部に亀裂があるとか、宝石を留めている爪が浮いていて作りが不完全であるとか、一般の方でも分かることもあるので挑戦してもらいたい。その際にクロスで事前に汚れを拭いておくとゴミとの見間違いを防げる。
 石目方が分からなくともノギスや定規でダイヤモンドの縦横や直径を測ることで推定することができる。公式や早見表もあるのでステップアップしたい方は専門書を読むことをお勧めする。
 宝石は1カラット当たり幾らかが相場の基本になるので、例えばリザーブ価格(最低落札価格)をメインストンの石目方で割っても目安になるのでカタログに記入して品質や大きさとの関連性を見つけることも相場のヒントになる。
 今回はかなり専門的になったが、あまり肩肘張らずに出来るところから始めるぐらいで良いので、気軽に下見会に出向いてみよう。毎回必ず新たな発見があるはずだ。「習うより慣れよ」の精神で行ってみよう。

画像提供:毎日オークション

Brand Jewelry 2019 WINTER-2020 SPRING掲載

三越伊勢丹ジュエリー&ウオッチ カタログ2019-2020

三越伊勢丹ジュエリーカタログ2019-2020

三越伊勢丹ジュエリー&ウオッチ カタログ2019-2020でファンシーカラーダイヤモンドの魅力について語りました。
三越伊勢丹ジュエリーカタログ2019-2020原田信之P10

三越伊勢丹ジュエリーカタログ2019-2020原田信之P11

「アヒマディ博士の宝石学」−宝石を科学的に解説ー

アヒマディ博士の宝石学

宝石学会で世界に発信出来る数少ない日本人研究者のアヒマディ博士が待望の1冊を出版しました。
彼は宝石の鑑別・産地同定にレーザーICPMSを世界で初めて応用して後に同法は世界のラボの必須とした実績を持っています。

内容は筆者の序章の一文に凝縮されています。

「本書は、宝石を身に着ける贅沢品として紹介するのではなく、自然から生まれた美しい鉱物結晶として解説します。最も理解すべきは鉱物結晶学的な知識や、宝石科学的な特性、成長要因と産状、そして、世界的な名産地を多くの写真を使いながら紹介していきます。さらに、宝石名の由来や歴史、処理の有無、品質や選び方などについてもまとめました。」

普段、筆者がプロに説明している時に使う元素記号や専門用語は殆ど無く、一般の方にも分かり易い内容になっています。
特に実際に産地に赴いて採掘のフィールドワークをしているので最新の産地情報が豊富に掲載されています。
筆者のモットーは情報開示なので、宝石の処理についての情報量が豊富では一般向けの書籍としては踏み込んだ一冊と言えます。

宝石業界の方のみならず鉱物や宝石、自然が好きな方にもお勧めの一冊です。

アマゾンリンク「アヒマディ博士の宝石学」2019年8月26日発売

阿依 アヒマディ博士プロフィール
理学博士
Tokyo Gem Science社 代表
FGA(英国宝石学会卒業証)を持ち、宝石学ににおける研究、教育セミナー、宝石鑑別などの技術サポートを行っている。2002年に京都大学地球惑星科学専攻の博士課程を修了し、全国宝石学協会で研究主幹として活躍する。天然、合成及び処理の研究と鑑別を行う。2011年にGIAにに入社し2012年から2016年3月まで、GIA TokyoラボのSenior Scientist及びTokyoラボのSenior Managerとして勤務。
 17年間の研究活動を通じて、宝石の天然合成の鑑別、諸宝石の原産地同定の研究やLA-ICP-MS(レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析)法の宝石学における応用を開発。多数の学術論文を国内外の学術誌に発表し、Gems & Gemology学術誌のDr. Edward J. Gubelin Most Valuable Article Awardを二度受賞、各学術学会において数dの最優秀発表賞を授与される。

あなたの知らないオークションの世界

毎日オークション電話ビット

 片手に受話器を持った10人以上のスタッフが一斉にパドルを上げて注目のロットの競りが始まった。始まる前からざわついている会場にも買う気満々のバイヤーが揃っている。ロットは12カラットのマダガスカル産 無処理(加熱の痕跡無し)のリングだ。親指の爪ほどのやや丸いオーバルのサファイアからは美しい濃淡モザイク模様が湧き出ている。透明度が高く程よい明るさのブルーは優しさも兼ね備えたジェムクオリティだ。30万円と言う格安のリザーブ価格(最低落札価格)は多くのバイヤーの食欲を刺激するには十分だ。
 オークショニア(オークションを取り仕切る人)がリザーブ価格の30万円からスタートしようとしたとき会場の中の海外のバイヤーから一気に250万円の声が上がった。気の短いバイヤーが時間短縮と格安で買おうとしていたバイヤーを振り払うための心理戦でもある。これでバイヤーは一気に3分の1ぐらいの数に落ち着いた。このように人気のあるロットはこれからが結構長い。案の定、会場にいるバイヤーと電話で参戦しているバイヤーのバトルが始まる。260万円、270万円、280万円と会場と電話の争いが続く。ここで会場に残っていた最後のバイヤーが降りた。決戦は残った電話の2人に絞られた。こうなるとオークショニアは丁寧に時間をかける。一声10万円ずつ競り上げるが、簡単にはハンマーは打たない。290万円、300万円と上がっていく。電話の1人は予算に余裕があるのか、競争相手がビットするとすぐに応戦する。もう1人は1回毎に検討する時間が長くなる。始まってから3分以上が経過している。通常このオークションでは、そこそこ競るロットでも1分以内なので長期戦だ。更に310万円、320万円、330万円と一声毎にオークショニアが防戦している方に「まだ競りますか?」と声をかけるが検討する時間がさらに長くなる。絞り出すように、340万、350万とパドルを上げるが、もう1人が直ぐに360万円と追ってきたところで遂に力尽きた。30万円のリザーブ価格のロットは最終的に360万円で落札された。
 この日のオークションは普段と違う空気が流れていた。平成から令和に変わる異例の10連休の初日に行われたために、いつもは会場に来ていた日本在住の外国人バイヤーも長い休みを故郷で過ごすため自国から電話で参加していた。いつもにも増して電話同士の争いが目立ったのはこのためだ。電話の場合、オークション会社のスタッフが現在の価格をバイヤーに伝えるが、現場の状況は想像するしかない。電話での参加は会場より冷めた目で見ることが出来る人も多いが、相手が見えないことでより熱くなる人が少なからずいる。そのような人が最後に2人残ると大変だ。「幾らで買う」より「勝負に勝つ」に変わってシーソーゲームの様相になる。
 シーソーゲームの結末が時計のように同じモデルの現行価格より高くなると残るのは後悔しかないが、一つ一つが異なる宝石では買い手によって適正価格もまちまちで、最終的な勝ち負けが曖昧なので救われる。間違いなく誰よりも高く出した結果が落札だが競争相手の多寡や強弱は時の運でもある。相場だけで決まらないのがオークションの怖さでもあり、魅力でもある。
 最後にこれを読んでオークションに恐れを抱いた皆さんに本田宗一郎さんの言葉「チャレンジして失敗を恐れるよりも何もしないことを恐れろ」を贈りたい。

Brand Jewlry 2019SUMMER-AUTUMN掲載

「令和」記念ブログ-Diamond Pipeline 2017

2014年

ダイヤモンドジュエリー国別販売金額2014

2017年

ダイヤモンドジュエリー国別販売金額2017

国別ダイヤモンドジュエリー販売金額は国力に加えてその国の若さも反映されます。
景気の波による金額の増減はありますが、米国は常にトップを走っています。
2014年に4割ほどだったシェアは2017年には5割に届こうとしています。
2017年はカナダと合わせた金額になっていますが、カナダの実質的な販売金額は5%未満と推定されます。
バブルの頃に米国に並んだ日本はバブル崩壊後にじりじりと下がって2014年に7.5%になり2017年には5%になってしまいました。
5%と言う数字の受け止め方は世代間格差があり、若い人は「5%もあるの?!」と驚き、年配の方は「そこまで下がったの」と嘆きます。
ヨーロッパは2014年にはそれぞれの国別では単独では表示されずその他に入っていました。
2017年はEUでまとめられて現われてきましたが、それでも8%程度です。
日本と同様に成熟期に入ったと考えられます。それに反して新興国は勢いがあります。
既に中国は15%以上を確保し、中東・トルコは10%程度、インドは11%から7%とシェアを落としましたがそれでも日本を上回っています。
以前は中国、香港、台湾は別でしたが、近年は3地域をまとめていることからデータ出典者の政治的姿勢がかいま見えます。
原産国での金額から研磨済みまでは1.5倍にもなりませんが、研磨済みからジュエリーになると4倍近くになり付加価値が高くなることが分かります。

Diamond Pipeline 2017以上。


データ出典:IDEX (International Diamond Exchange )Tacy Diamond Pipeline 
単位:Billion $ US$1Billion=US$1,000Million=$1,000,000,000 US1=\110の場合US$1Billionは1,100億円
雑誌JEWEL SPRING号掲載



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