ジュエリーコンシェルジュ原田信之

原田信之 所有されているジュエリーの活用方法をアドバイスする株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリー JAAG(ジャーグ)の代表のブログ。オークションの査定や百数十回に及ぶ宝石の海外買い付け、ジュエリーのプロデューサーとしての経験を生かして、相続や売却、資産性のある宝石の購入のアドバイスをします。

ジュエリーアドバイザーの仕事帖

「ちょっと待って、リングのサイズ直しをする前に!」 

 リングのサイズ直しで悩んだことありませんか。プロでもアドバイスに自信が持てなかったり、曖昧な対応になってしまうことも少なくありません。
 本来サイズを直すと言う作業はリングを少なからず傷めることになりますので、出来るだけサイズ直しはしないのが理想です。量産モデルの場合に一番良いのは自分の指のサイズで初めから作ってもらうことです。十分な納期さえあればメーカーでしたら対応可能です。そのため余裕を持って買い物することを勧めます。
 大切なのはフィッティングです。「ボンレスならず、斜めならず。」あるジュエリー販売の達人の言葉です。何のことか直ぐにピンとくる人がいたら、なかなかのジュエリー通かも知れません。ジュエリー販売に携わる方を集めて「最適な指輪のサイズの測り方」と言うテーマでディスカッションしたときに発せられた一言です。ボンレスハムのように指に食い込むのは小さすぎで、指を閉じたときに斜めになるのは大きすぎと言う意味です。指の骨の大きさや肉のつき方も一人一人異なるので、全ての人に当てはまるフィッティングはありません。その日の体調や季節によっても指のサイズが違うので後になってきつくなったり、ゆるくなったりもします。また、指輪の幅や形状によって同じ指でもサイズが異なります。その意味ではあまり神経質になる必要はありません。
大切なのは、そのような情報を正しくお伝えした上でサイズを測る事です。前述のボンレスハムのようになるのはエレガントではないので、迷ったらきつめより抜けない程度の少し余裕があるサイズを選ぶ方が良いでしょう。少し大きめでしたら、ぴったりサイズの細めのリングを重ねづけして抜けることを防ぐことも出来ます。お客様自身に指輪をつけてから外すまでの動作をしてもらい、その様子を観察してから判断すると言う販売員さんもいました。
 そもそも構造的にサイズ直しが出来ないリングもあります。出来ないなら諦めれば良いと言うのでは身も蓋もありません。そのような場合に大きめでしたら中指か人差し指に、小さめでしたら小指に着けて違和感がなければ新たな自分の発見にもなります。
 欧米では若い女性が中心の宝石が大きいメインストンリングを身内から受け継ぐことが多く、受け継いだときにサイズが大きくてもサイズを直すことはせずに細めのガードリングを重ねて落ちないように着けたり、内側に金やプラチナの突起(*Sizing beads)やスプリング(Spring Insert)をつけて調整をします。年を重ねて元のサイズがちょうど良くなることもありますので、見習いたいものです。
 どうしてもサイズを直さなくてはならない場合に気をつけなければならないのは内側や外側に刻印されている金性、ブランド、石目方等の情報が消えないようにすることです。こうした中には価値に影響する刻印もありますので売り手、買い手とも確認することが大切です。
 日本も欧米のようにジュエリー文化が成熟していくと新たなジュエリーを購入するより受け継ぐ事が多くなるので、サイズの異なるリングをどのように活用するかが重要視されてきます。
Sizing beads

Sizing Beads例

Spring Insert

Spring Insert例


* Sizing beadsでウエッブ検索、画像検索すると欧米の情報が沢山出てきますのでお試し下さい。


De Beers LIGHTBOXが映し出す合成ダイヤモンドの実像

Lightbox

昨年9月28日にDe Beersは合成ダイヤモンドジュエリーブランドLIGHTBOXを発売しました。

そのポリシーは合成ダイヤモンドとは何かを十分に示唆しています。


1.価格は天然ダイヤモンドの10分の1
巷では天然の30%引きとか天然の半分の価格とか様々な価格が存在しています。設備さえ整えれば量産が出来、いづれ価格は下がって行くことが予想されましたが、その前にDe Beersが一気に10分の1からスタートしたことは競争相手を戦意喪失させました。天然ダイヤモンドはサイズが大きくなればなるほど1カラット当たり価格も上がりますが、1カラットまでは全て1カラット当たり$800としたことで違いをはっきりさせました。またDe BeersのCEOは、ちょうど液晶テレビが出たてでは高価で、技術が向上して品質が上がった頃、価格が大幅に下がったことに例えています。技術革新と量産体制の進捗によって価格は更に下がって行くと示唆しています。

2.カラーレスもピンクもブルーも同一価格
合成ダイヤモンドの色は生産過程の加工次第でいかようにもなるので、天然ダイヤモンドのような稀少性の違いは無いとしています。今後は市場の好みを反映してトーンの調整もするとしています。

3.グレーディングレポートはつけない
天然とは異なりカラーやクラリティーの調整は可能なのでレポートで差をつけることに意味がないので不要としています。

4.処理の情報公開はしない
合成ダイヤモンドはカラーレス、ピンク、ブルーに仕上げるために高温高圧処理や放射線処理等を施すことがありますが、天然ダイヤモンドとは異なり処理はダイヤモンドを人造する技術的プロセスのもう1つのステップであるため価値に影響を与えず、消費者に伝える必要はないとのことです。合成ダイヤモンドはmanufactured product(工業製品)なので加工過程が何段階あるかは関係ないとしました。

5.ジュエリーはシルバー又はK10で製造
天然ダイヤモンドのジュエリーと異なり合成ダイヤモンドジュエリーは価値を求めるものではなくファッション的に気軽につける装身具なのでプラチナやK18と言った宝石の装身具の素材ではつくらない、としています。

○参考記事(英文)
De Beers: No Need to Flag Synthetics Treatments
De Beers says LGD prices have dropped 60 percent

画像:LIGHTBOX




諏訪恭一新著「品質が分かるジュエリーの見方」

品質の分かるジュエリーの見方表紙帯付

諏訪貿易株式会社 会長 諏訪恭一の新著「品質が分かるジュエリーの見方」(ナツメ社刊)が本日発売されました。
私が代表をしている株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリーで実践しているジュエリーの格付と評価方法が豊富な画像と共に詳しく解説されています。
これからジュエリーを購入する方の手引き書としてだけでなく、ジュエリーを作られる方の参考書としてもお勧めです。
背表紙は格付のピラミッドが描かれています。
品質の分かるジュエリーの見方裏表紙帯付


中身をチラ見せ
品質の分かるジュエリーの見方チラ見せ縁切り


○内容
プロは「宝石」「構想」「仕立て」の3つの要素で品質を判定する
■宝石箱の仕分けができる
宝石の装身具か否かの仕分けができます。使われている宝石や貴金属、
刻印の見方がわかれば、素人でも最低限の判定ができます。

■品質判定に役立つ全方位のビジュアル
高品質から低品質のジュエリーを拡大写真で等しく掲載。
価値を持ち続けるジュエリーとそうでないものの差が一目でわかります。

■製作者の構想を見抜く
ジュエリーを裏側から見ると、製作者の「構想」を読みとることができます。
手間をかけて仕立てたか手抜きをしたかが一目瞭然です。

■宝石の品質と価値がわかる特別付録
ジュエリーの価値を理解するための主要宝石のクオリティースケールと
価値比較表を掲載。宝石を長年見てきた筆者ならではのスペシャル付録です。

【主要目次】
■序章
・装身具の仕分け
・ジュエリーの品質判定
■47のジュエリー
・EXCELLENT
・VERY GOOD
・GOOD
・FAIR
・POOR
■付録
1 ジュエリーの価値
2 クオリティスケールと宝石の価値比較表
3 ジュエリー格付比較表

○アマゾンでの購入



ジュエリーアドバイザーの仕事帖

装身具の仕分け前画像

 ジュエリーの整理の相談は様々ですが、一番多いのは相続です。お母様、お婆様が亡くなって残されたジュエリーをどうするかの相談です。通常はご主人又はご兄弟、お子さんが相談に来られます。まずは、ご相談者がどのようにされたいかご要望をお聞きします。売却をご希望でも出来るだけ価値のあるものは受け継いでお使いになった方が良いとお勧めします。相続出来る家族関係をお伺いし、実際に使っていただけそうな方向けのジュエリーを選んだり、価値が同じようになるように分けたりします。
 ご家族で相続を争っているケースは仲に入った弁護士や会計士や税理士の方が相談に来られます。資産家の場合は結構な割合で争っているケースが多く利害関係は複雑ですが私の所に来る時には既に相続の割合の決着がついているので、基本的に殆どを売却して現金化し、それを合意した割合で分けます。出来れば売却よりジュエリーのままで受け継いでもらいたいところですが係争中であれば致し方ありません。大きな相続では争っている双方の弁護団の間に入って査定を行うこともあります。まるで小説やテレビドラマの一場面のような光景に出くわすこともあります。売却方法としては透明性が高くそのときの相場で売却できるオークションが向いています。
 相続以外で多いのは「終活」です。お持ちの方ご本人が着ける機会も少なくなったのでそろそろ整理したいと相談に来られます。娘さんが居られずお嫁さんしかいない方に以前多かったのは「嫁にあげるぐらいなら全部売りたい」と言うそれこそドラマ並みの相談でした。最近は少し変わって、お嫁さんに聞いたが要らないと言われてしまったと言うケースが半分ぐらいを占めます。装身具の簡素化とでも言いましょうか、残念ながら近年、若い方たちは本格的なジュエリーを避ける傾向にあります。終活のご相談の残り半分は差し上げても喜ばれないと思い込んで聞くことすら遠慮されてしまいます。この中には自分の買い物の履歴をお嫁さんに知られたくないと言う気持ちも含まれます。ややこしいのはお嬢さんとお嫁さん両方いるケースで本当はお嬢さんに差し上げたいのに、持っているジュエリーをお嫁さんもよく知っていると言ったケースです。このようなときはお嬢さんとお嫁さんの関係にヒビが入ることを避けて、どちらにも差し上げずに処分すると言う選択をする方も少なくありません。そのようなときでも私はアドバイザーなのでご家族にジュエリーを活用してもらえる解決策をご提案します。それぞれのジュエリーの価値を査定してお嬢さんとお嫁さんに同額ぐらいになるように選んでもらうことが1つです。また形見分けとして同額ぐらいの品を1つずつ選んでいただき残ったものは処分してご本人の老後の資金とする方法もあります。メインとなる宝石自体は価値が高くても、デザインが古くて使いづらい時にはご家族に作り替えも提案します。ただし大粒のアメシストに20万円かけるような作り替え費用が見合わない宝石にはお勧めしておりません。故人を偲んで身につけるセンチメンタルバリューのあるような場合を除いて何が何でも作り替えるのはプロとして失格です。
雑誌Jewel掲載記事

ジュエリーアドバイザーの仕事帖

ペアーシェイプダイヤモンドリング

 5年ほど前に知人の女性が訪ねてきました。実は20数年前に母が購入したダイヤモンドリングを孫の教育資金に当てたいのですがどうしたら良いでしょうかと言うご相談でした。ちょうどその年に孫の教育資金を1500万円まで非課税で贈与できる新制度が始まったばかりで早速それを利用出来ればとお考えになったようです。

 見ると6カラットのペアーシェイプダイヤモンドがシンプルにセットされたリングです。ペアーシェイプは同じ重量のラウンドと比較すると2-3割大きく見えますので、ラウンドの8カラット近い堂々としたサイズです。ダイヤモンドで有名な海外ブランド店から2,000万円で購入されたものだそうです。孫が2人いるので出来れば1,000万円ずつ渡したいとの希望でした。ちょうど大粒ダイヤモンドが数年で3倍ぐらいに値上がりしていた頃でしたので、相場を反映するオークションでの売却をお勧めしました。当時私は上場しているオークション会社の査定人を請け負っており、リザーブ価格の決定権は私にありましたが、オークション相場でも1,800万円が妥当なリザーブでした。そこで不落の可能性もあることを依頼人に伝えて、思い切って2,000万円リザーブで出品しました。結果はブランドの人気も手伝って2,100万円で落札されて胸を撫で下ろしたことを今でもはっきり覚えています。依頼人も会場に見に来ていて落札された後で強く喜びの握手したのは言うまでもありません。
 その頃別の方からも売却依頼がありました。ちょうど前述のダイヤモンドリングと同時期に購入されたイエローゴールドのダイヤモンドネックレスです。パリの有名なブランドの物でお母様から受け継いだ娘さんからの相談です。幅が2〜3センチほどのイエローゴールドにメレーダイヤモンドがびっしりとパヴェセッティングされた大変豪華なネックレスです。まさにバブル真っ盛りの熱狂を感じさせるものでした。購入価格は1千万円程度との事でしたが、残念ながら現在の日本では豪華すぎて人気がなさそうなので、外国人も多く参加するオークションに出品しました。リザーブ価格はブランドプレミアムも考慮して100万円としました。結果はリザーブ価格を少し超えた110万円で落札されました。

 同時期に購入された高額のジュエリーですが、一方は20数年楽しんで当時2,000万円のリングがほぼ同額の2,100万円で落札さ、方や1,000万円が約10分の1の110万円となってしまいました。これは何故でしょうか。

 まずは大粒ダイヤモンドが数年で3倍になったと言う幸運がありました。そして基本的に宝石は1粒が大きければ大きいほど資産性が高くなり、逆に小粒になればなるほど資産性よりファッション性が高くなります。流行しているスタイルは人気がある間は高くなりますが、流行が終わると殆ど評価されません。ジュエリーにある程度の資産性を求めるなら、この事例のように人気のある宝石で出来るだけ大きなサイズを求めることをお勧めします。


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