ジュエリーコンシェルジュ原田信之

原田信之 所有されているジュエリーの活用方法をアドバイスする株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリー JAAG(ジャーグ)の代表のブログ。オークションの査定や百数十回に及ぶ宝石の海外買い付け、ジュエリーのプロデューサーとしての経験を生かして、相続や売却、資産性のある宝石の購入のアドバイスをします。

2007年03月

エメラルドカット ダイヤモンド

EM 5ct 斜めから








これが、今回の出張で買い付けしたダイヤモンドの一つです。
とても美しい5カラットサイズのエメラルドカットです。




前回、チェックポイントの項目を書きましたが、
写真を見ながら説明します。

EM 5ct 正面から







まず、正面を見てください。
縦横の比率は、GIAの教本では1:1.5〜1.75とありますが、流行も好みもあります。
現在の主流は、アッシャーカットの流行もあり短めです。
因みにこれは1:1.22です。私は、このぐらいが綺麗だと思います。
次にコーナーの大きさも重要です。小さすぎるとエメラルドカットの良さが出ません。大きすぎると8角形のようになります。大きすぎず小さすぎないバランスが大切です。たいていの場合、このコーナーに爪をかけますので、爪の形状によってはコーナーを強調しますので、大きさは重要です。
ファセットのシンメトリー(対称性)は、ガラスの箱に入れたほうが、正確に判断できます。特にキュレットが中心にあるかどうかは、美しさにも影響します。
最も難しいのは、白く見える部分と黒く見える部分のバランスです。私たちは、モザイク模様のバランスと言います。パビリオンとクラウンのバランスにもよりますが、深すぎると左右から中心にかけての蝶ネクタイ状の部分が黒くなりすぎます。また、あとで出てきますが、全体の深さが程よくても、裏の形状が悪いとぼやけます。この写真ぐらいのバランスが私は好きです。



EM 5ct 横から







横から見たところです。キュレットが程よく短いために左右からキュレットにかけての絞り込まれているのが分かります。私は、「お尻が引き締まった」と言う表現をします。
もう一つ注意しなくてはならないのが、贅肉です。ほとんどのエメラルドカットはガードルからキュレットが直線ではありません。3段の折れ線を描きながらすぼまっていきます。この折れ線の角度がつきすぎていると最悪です。輝きを悪くすると同時にジュエリーに仕立てるときの自由度を奪います。つまり、石座を絞り込もうと思っても、この部分が邪魔をして綺麗に出来ません。更に見た目の大きさが変わらないのに重さが重くなるので、単価が同じなら価格が高くなります。写真のように贅肉がなくお尻の引き締まったものは、多くありません。なぜなら、研磨職人は原石から出来るだけ目減りを少なく研磨するのが腕の見せ所と教育されているからです。これは、原石も形や場面の大きさで取引されるのではなく、重さで取引されているからです。



EM 5ct フェイスダウン







最後に逆さまにしてお尻の状態を見てください。
この石は、若干クラウンが薄いのですが、パビリオンの角度(お尻の引き締まり方)が良いのでバランス良い輝きを得ています。もちろんテーブルの大きさもクラウンやパビリオンの比率に応じて、適切なものがあります。



全てを説明することは出来ませんが、ファンシーカットの買い付けは難しいものです。ラウンドと比較になりません。バイヤーの腕の見せ所です。





「イスラエルのダイヤモンド産業の現在」

久しぶりのイスラエルのマーケットは大きく変貌していました。
以下に現状をまとめます。


       「イスラエルのダイヤモンド産業の現在」
      −グローバル戦略と大粒化で生き残りにかける−

 ここ十年のイスラエルのダイヤモンド研磨産業は後退を余儀なくされています。数万人も擁した研磨工は1,000人程度にまで減少しました。

低賃金を武器に躍進を続けるインド研磨のダイヤモンドは、種類を広げ、サイズアップをして彼等のシェアを奪ってきました。

更にパレスチナとの紛争による治安の悪化が、バイヤーを遠のけ、状況を悪くしています。

このため一時はイスラエルの人たちも将来を絶望視していました。

しかし今は置かれた状況に対応し逞しく生きています。

現在の業態を以下の4つに分けて報告します。



1.本社機能

鉱山会社のサイト等で原石を購入し、主に中国やアジアの自社工場で研磨後、香港、ニューヨーク、アントワープの現地オフィスに振り分けて販売しています。

特に中国市場を抱える香港の重要性が高くなっています。

そのため原石の輸入は増えています。

また、ジュエリーメーカーやナショナルチェーンとタイアップすることも多く、イスラエルはその際の本社機能を果たしています。

資本が必要なので大手業者が中心です。



2.大粒にシフト

会社の規模を問わず、自然な流れで研磨賃が占める割合が少ない1カラット以上の商品にシフトしています。

機械の進歩により技術力の差は少なくなっていますので、原石の調達力が問われています。

3.特化

例えば、これまでプリンセスカットの2ミリから2カラットまで揃えていたところを、一番と得意なサイズへと絞り込んでいます。

総研磨量は減っていますが、0.2カラット以上のファンシーシェイプの研磨は依然イスラエルが大きなシェアを握っています。

又、ジュエリーや時計の枠に合わせてカスタムメイドで特殊なカットを行うニッチマーケットに特化している業者もいます。

この分野は他の研磨地の追随を許していません。



4.インドから買い付け

低品質なものをインドから買い付けて3〜4%の口銭で販売する業者が増えています。

最も安易な方法なので、同業者からは冷ややかに見られています。



 日本ではイスラエルからの直接の輸入は減少していますが、グローバルに商品の流れを捉えて見ることが大切です。

ユダヤの結婚式

ユダヤの結婚式








ユダヤ人の友人から招かれて息子さんの結婚式に出席しました。
ユダヤ人の結婚式は長時間なので有名です。
夜の7時半から式(儀式)が始まり、9時ごろから宴会に入って、
終わるのがだいたい朝の4時とか5時です。

私は2時で失礼したので、あとで聞いたところによると、
今回もその類に漏れずのようでした。

宴会の間、食事とダンスが延々と続き、会場はディスコ(クラブ?)
そのものです。
大声で話さないと会話が成り立ちません。

写真は、新郎新婦とラビです。
ユダヤ人の結婚式で印象的なのは、
儀式の最後でラビが新郎にグラスを渡し、
新郎が踏みつけて割るシーンです。
迫害の歴史を忘れない意味があるそうです。
これを見ると、流浪の末にやっと自分たちの国をこの地につくり、
ここに拘る理由を見たような気がします。


エメラルドカット ダイヤモンドのチェックポイント 

ラマトガンのダイヤモンド取引所イスラエルのダイヤモンド取引所は4つ大きなビルから成っています。
写真に写っているビルは代表的な2つの取引所です。
左がマカビ、右はシムションです。
4つのビルは通路で繋がっていて行き来が自由に出来ます。
セキュリティは、各国にある取引所の中でももっとも厳しく、
登録が必要で、登録後は写真つきのカードを身につけることが義務付けられます。
他の取引所の多くは、行き先を告げてパスポートを預けるだけです。





エメラルドカット
今回も、大粒のダイヤモンドの買い付けが主な目的です。
マーケットに呼びかけて、5〜8カラットのエメラルドカットが集まりました。
ハイカラーで5つも一時に集まるのは、2年ぶりです。まずは、ルーペを使わずに美しさを確認します。



このときにチェックしているのは、以下の4点です。

1.輪郭(縦横のバランス、コーナーの大小)
2.透明度
3.彩度(純色の度合い)
4.モザイク模様(白黒のパターン)のバランス

次に縦横深さを測って、バランスの確認とトータルデプスを算出します。
私の場合は、このトータルデプスがもっとも大切です。
64%を超えるものは、この時点で手を出しません。
出来れば60%を切るものを優先します。




手のひらにのせる次に指に乗せて、指輪にセットした感じを素早くチェックします。
通常は、手のひらではなく反対の指の間に置きます。
今回は写真を撮る都合上手のひらに置いています。
皆さんには、大きさのイメージがつくと思います。
ただし、私の手は日本人の中で特大サイズなので見た目より少し大きいと思ってください。
どれも、長辺が1センチを超える大きさです。




カラーをチェック特別に白い紙の上に載せて、カラーをチェックします。
黄色や茶色や灰色の明暗度を見るのです。
この場合は、どれも無色の範囲ですが、一つ一つが異なるので注意深く見ます。
利き目によって、右と左で濃く見えたり薄く見えたりしますので、
左右に置き換えながら見ていきます。
写真では伝わりませんが、左端のものが一番無色です。



ここまでチェックしてから初めてルーペで不完全性をチェックします。
ブラックインクルージョンや性質の悪いクリベージ、ナチュラルを含む欠けの有無を見ていきます。


チンボックスでチェック次は、チンボックス(ガラスの箱)に入れてチェックします。
このとき見ているのは、

1.再度、モザイク模様のバランス。
2.キュレットのずれやコーナー等の対称性
3.フェイスアップでのカラー

直接見るより、ガラス越しの方が上記の項目がはっきりします。



仮枠でチェック1仮枠でチェック2







仮枠でチェック3
最後は、仮枠(鉄製)で実際にリングに仕立てた際の輝きの感じや大きさのバランスを見ていきます。
特に3つ目の横から見たときの爪とダイヤモンドの隙間は重要です。
お尻の重たいダイヤは、この隙間が少なくなります。
そうすると爪を絞り込むことが出来ず、エレガントなジュエリーに仕上がりません。







以上が大粒のエメラルドカットを買うときに見ている最低限のポイントをまとめました。

この中の一つでも買えればよいのですが。


テルアビブ出張

テルアビブの海岸








7年ぶりにテルアビブに来ています。

治安が悪い

バイヤーが来ない

ニューヨークや香港のオフィスで代わりに販売する業者が増える。

ますます、商品が少なくなる。

更にバイヤーが来ない

と言う悪循環に加えて、
工賃の割合の高い小粒のファンシーシェイプが
人件費の安いインドにシェアを奪われると言う状況も加わり、
どのようにこの状況を打開しているのか確かめるために来ました。

こちらは、季節の移り変わりで雨季にあたります。
と言っても最高気温が20度ぐらいで雨さえ降っていなければ日本人にとって
さわやかな初夏のような快適な気候です。
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