ジュエリーコンシェルジュ原田信之

原田信之 所有されているジュエリーの活用方法をアドバイスする株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリー JAAG(ジャーグ)の代表のブログ。オークションの査定や百数十回に及ぶ宝石の海外買い付け、ジュエリーのプロデューサーとしての経験を生かして、相続や売却、資産性のある宝石の購入のアドバイスをします。

2007年05月

ピジョンブラッド

ルビーのピジョンブラッドについて読者の方から質問がありましたのでご説明いたします。

そもそも、ピジョンブラッドは伝統的なヨーロッパの概念です。
決して、範囲が厳密に決められているものではありません。

その概念が形成されたその当時の環境を以下にまとめます。

1.産地
 良質のルビーはビルマのモゴック鉱山に限られていた。
2.処理
 当時は、現在のように高温加熱の処理は存在していないので、
 宝石品質のルビーの透明度は高かった。
3.ジュエリーのメインの宝石には存在感のある大粒が使われていた
  多くは、3カラット以上で日本のように1カラット以下のものをメインストンに仕立てることはなかった。

以上のこととピジョンブラッドは濃い赤色ということを合わせると。

ビルマのモゴック鉱山産の無処理でメインストンサイズの濃い赤のルビー」と言うことになります。

同じ濃い赤色だったら、1カラット以下の小粒のものでも良いのではと言う方もいらっしゃいますが、濃くても大粒なら内側からモザイク模様が浮かび上がり明るくなるのに、小粒は、モザイクが小さく私たちの眼には明るく感ぜず、真っ暗な印象になってしまいます。

また、ビルマ産ルビーの多くは紫外線に当てると蛍光を発します。
もともと紫外線を含んでいる自然光の下では燃えるような赤になることも美しさの源です。

更に当時は今より品質の高いものがジュエリーになっていたので、より透明度が高く、モザイク模様もより鮮明で美しいルビーの代名詞になったのだと思います。
今のように加熱のものが殆どの場合は、透明度が高くないので大粒で濃い赤色でもモザイク模様は弱くなります。

以上の条件を満たすピジョンブラッドと言われるようなルビーは限られています。
もちろん、出会えたら幸運ですが、言葉に拘らずにより大粒で少し明るい透明度の高いルビーを選んでみたらいかがでしょう。
日常生活の多くの場面で美しい赤色を発します。

そして、4ミリ以下のような小粒のものは1カラットサイズのものより更に薄めがジュエリーとして綺麗になります。

宝石は余裕資金で購入

先日、ある宝石店さんが倒産しました。
その名前を聞いて、24年前の体験が昨日のように蘇りました。

大学を卒業したての私が現在の会社に入って間もない頃のことでした。
宝石の輸入卸が本業でしたが、小売の現場を体験する目的で、
宝飾品卸の取引先に依頼して、その得意先のお店で数日研修をしました。

ちょうど、そのお店は店頭催事の期間中で、たくさんのお客様が来店され、賑わっていたのを覚えています。
当時の私は、宝石のことは言うに及ばず、社会人としての経験もない若造で、接客の手伝いなど出来るわけがなく、ただただ、お店の方の邪魔にならないように後ろに控えているのが精一杯でした。

その時そこで見たものは、販売員さんがノルマを達成するために、ターゲットのお客様に電話をかけまくって来店を促し、分割払いを武器に執拗に販売する姿でした。
電卓の裏に信販会社の金利表が張ってあり、『月々に直すとこんなに小額な支払いで価値あるものが手に入る』と強調していました。
高齢のお客様も多く、年金だけで生活している方もいらっしゃいました。
店員さんの中には年金がいつ入るか知っている人もいて、それに合わせた支払いを薦める光景にも出くわしました。
既に以前に組んだクレジットを支払い中のお客様に対しても、言葉巧みに更なるクレジットを薦める強者もいました。

悲しいことに、ノルマが達成できない販売員さんは穴埋めに自分でクレジットを組んで購入していました。
その額が月々の給料に近いと嘆いている人もいて、この方々も被害者なのだと分かりました。

この時に目にしたことが、ずっと私の頭から離れることはありませんでした。
実は、これ以後このような販売に立ち会うことはなかったのですが、初めての小売体験が強烈過ぎて、思い起こす度に憤りを感じていました。

もう、お気づきですね。
このお店が倒産したのです。
報道でご存知だとは思いますが、クレジットを使った強引な訪問販売等が社会問題化し、信販会社が審査を厳密にするようになった結果、この手の営業が成り立たず倒産が相次いでいます。

信販会社や小売店に世間の非難が浴びせられていますが、お年寄りのような弱者を別にすれば、無理して買う方にも問題があります。

生活に必要なもの−家や場合によっては車−の購入に無理のない範囲でクレジットやローンを組むことは致し方ありませんが、宝石は、無理して買うものではありません。
何かの記念に思いを込めて購入したり、プレゼントするものです。
宝石は、余裕資金で購入してください。
余裕資金で購入した宝石は、人生に潤いを与えてくれます。

余談ですが、ある老舗の宝石店の社長さんにクレジットの比率を伺ったことがあります。
結果は、殆どないそうです。
このお店は、商品も接客も一流で業界でも最も尊敬できるお店の一つです。
無理して販売しない姿勢が全てに表れるのでしょうね。
皆さんもお店選びの目安にしては如何でしょうか。

ブライダルプランナー

先日、恵比寿のバンタンデザイン研究所でダイヤモンドの講義をしてきました。
宝石業界の方やジュエリー愛好家の方の前でお話しすることはありますが、
今回は、今人気の職業のブライダルプランナーの卵の方達が対象です。
年齢は18歳から25歳の希望溢れる若者です。
あまりの若さに始めるまでは不安でしたが、皆さん非常に礼儀正しく素直でびっくりしました。
日本の若者も捨てたものではありません。
皆さん、がんばってください!!

内容は、ダイヤモンドの品質について、本質的に説明しました。
詳しくは、バンタンデザイン研究所のブログをご覧ください。

バンタンデザイン研究所 広報スタッフ“サチコ”のブログ

サチコさん(綺麗な方です!)上手にまとめていただいてありがとうございます。

以前、All Aboutでもダイヤモンドの選び方と宝石の処理についての講座をいたしました。
更に詳しく知りたい方は、ご覧ください。

男のためのジュエリー講座 男ならダイヤモンドは感性で選ぶ

男のためのジュエリー講座 ジュエリーに施される「処理」



ジュエリーの大衆化と宝石の処理

ルビー、サファイア、エメラルドのように伝統的な宝石はそもそも綺麗なものは少なく高価です。
だからこそ「宝石」です。
それが、ジュエリーの大衆化でその需要に応えるために本来価値の低い低品質なものに加熱含侵をして供給を増やしたのが宝石の処理の歴史です。
処理されたものはもともと宝石品質ではないのです。
反対に言うと、宝石品質でしたら処理は必要ありません。

今までは、情報が足りないため、処理と無処理の価値の差がはっきりしていませんでした。
処理の技術が進んだ結果、供給が飛躍的に増え、無処理のものとの価格差が広がり始めています。
この差は更に広がり、処理する前の品質に見合った価値にいずれ収斂すると思います。

20年前は、そこそこの品質でも3カラットを超えるルビーはなかなか見ることが出来ませんでしたが、今はかなり安い価格で巷に溢れています。
加熱等の処理技術が進み、出現率を圧倒的に上げています。

エメラルドは10年以上前から含侵処理が著しくなり、ルビー、サファイアよりも前に価格が既に下がっています。

正直なもので、オークション等の再流通市場では既に大きな価格差がついています。

無処理で美しいものは限られているので、現実的には処理されたものが商品の中心になります。
処理されたものを購入されるときには、価値に見合った価格であるか注意する必要があります。
もちろん正確な情報開示がされていることが前提です。

続 カシミールサファイア

前回の続編です。

カシミールサファイア 22.66カラット クッションシェイプ
落札価格 $3,064,000  1ドル120円換算で3億6千7百万円

オークションのカタログによると、このサファイアは1886年に$2,200で購入されたそうです。
何と1,300倍以上になったことになります。
James Hill氏は、家族の財産の為に購入されたそうですが、120年後に1,300倍になったことは
正に思惑通りだったのではないでしょうか。


このオークションではこのほかにレッドダイヤモンドが特筆すべきでしょう。

1.59カラット ラディアントカット 
Fancy Purplish Red VS2
落札価格 $958,400 1ドル120円換算で約1億1千5百万円
     1カラット当たり$602,76 約7千2百万円

個人的には、レッドダイヤモンドの美しさは評価していませんが、ダイヤモンドの1カラット当たり価格のオークションでの記録はレッドダイヤモンドが持っていることからコレクターには格好のアイテムです。

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