ジュエリーコンシェルジュ原田信之

原田信之 所有されているジュエリーの活用方法をアドバイスする株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリー JAAG(ジャーグ)の代表のブログ。オークションの査定や百数十回に及ぶ宝石の海外買い付け、ジュエリーのプロデューサーとしての経験を生かして、相続や売却、資産性のある宝石の購入のアドバイスをします。

2007年07月

資源メジャーとダイヤモンド

本日の日本経済新聞によると、

英豪資源大手リオ・ティントは12日、カナダのアルミ大手、アルキャンを買収することで合意したと発表した。
買収額は381億ドル(4兆6500億円)。
両社のアルミ地金生産量は合計で420万トン強に達し、統合後は世界首位に躍り出る。これを機に世界の資源大手の再編が加速する可能性もある。
現在、資源メジャーと言われているのは、英豪系の「リオ・ティント」、同じく英豪系の「BHP Billiton」、英「アングロ・アメリカ」の3社に加えて、ブラジルの「CVRD」、スイスの「エクストラータ」。
また、リオ・ティント自身もアルキャンを買わなければ、BHPの標的になったとの見方出ている。

アルミ業界の再編に関する記事ですが、ダイヤモンドの世界にも無縁ではありません。
ダイヤモンド原石の将来の主導権を誰が握るかを左右することですらあります。

上記の記事のように資源メジャーと言われている会社の中で、現在ダイヤモンドの原石で高いシェアを持っているのは、DTC(De Beers)の親会社の「Anglo American plc」、オーストラリアのArgyle鉱山とカナダのDiavic鉱山の他ジンバブエにも鉱山を持っている「Rio Tinto Zinc」、カナダのEkati鉱山の「BHP Billiton」の3社です。
その他は、会社ではありませんが、「Russia」に加えてイスラエル人の「Lev Leviev」氏率いるグループがあります。
正確にはわかりませんが、シェアはDTCが40〜45%、Russiaが20%前後、残りをRio Tinto Zinc、BHP Billiton、Lev Levievが分け合ってその他は10%未満と思われます。

もし、新聞記事のようにBHPがLio Tintoを買うようにことになっていたら、DTC、Russiaに続く勢力が生まれて、構図がすっかり変わっていました。

ダイヤモンドの価格は、長いことDe Beers(DTC)1社が制御してきましたが、
1995年 ロシア産原石の独占販売終了
1996年 Argyle鉱山(Rio Tinto Zinc)カルテル離脱
1998年 3 grainer(0.75ct)以下の原石(研磨済み0.2ct)の価格調整放棄
1998年 カナダEkati鉱山(BHP Billiton)ダイヤモンド原石をDe Beersに供給(2002年終了)
2000年 De Beers原石価格調整全面的放棄
2001年 カナダDiavic鉱山(Rio Tinto Zinc)本格稼動
と独占が崩れてきました。

最近では、各グループの原石販売が入札制に変わり、需給を反映したものになってきました。
入札制と世界的な所得の格差によって生まれた高額品の需要が重なった結果、大粒で稀少性の高いダイヤモンドの価格の高騰が生まれています。

これからも、川上の動きに目が離せません。




濫用的販売者

昨日、米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンドによる、ブルドックソースの買収防衛策差し止め申し立てで、東京高裁が、スティールを自身の利益のみを追求する「濫用的買収者」に当たると認定したと言うニュースが流れました。

宝石業界には、買収に値する会社が見当たらないのか、話題になりませんが、
「濫用」(一定の基準や限度を越えてむやみに使うこと)と言う言葉から昨今の無処理(非加熱)ルビー、サファイアの商品が連想されました。

最近では、弊社オーナーの諏訪恭一氏の著書「宝石1、2、3」の影響もあってか、無処理の宝石に関心が高くなっています。
巷の宝石屋さんの広告やネットの通販でも見るようになりました。
問題は、その品質です。
確かに加熱をしていないと言うレポートは付いていますが、美しくないものが多く、本末転倒なことになっています。

「加熱を必要としない美しいものは、稀少です。」

「加熱を施してなくても美しくないものは稀少ではありません。」


ビルマに行くと無処理で美しくないルビーはたくさんあります。
そのままでは美しくないので、少しでも綺麗にしようとしたのが加熱処理です。
本来価値の低いものに無処理のレポートをつけて販売することはレポートの濫用です。
言うならば、それを販売する人は「濫用的販売者」です。

ダイヤモンドの「4C」を逆手に取って販売しているのと何ら変わりはありません。
何か「お墨付き」的なものが出来ると利用するものが必ず現れます。
何度も言いますが、レポートの鵜呑みをしないでください。
まず、ご自身の目で見て美しい宝石をお求めください。


因みに多くの業界の方は、加熱をしていない状態を「非加熱」と表現していますが、私たちは、研磨以外を施していない宝石を称して「無処理」と呼んでいます。
英語で言うと“unheated”と“untreated”の違いです。
エメラルド等の含侵処理されていないものも“untreated”です。


頭で仕事できるようになるのはいつ?

 いつも楽しみにしている日経新聞のスポーツ欄の豊田泰光さんのコラムに「若いときは肉体が、そのうち経験が、最後は頭が(ヒットを)打たせてくれる」とありました。
これは、1958年に来日したカージナルスのスタン・ミュージアルが言ったそうです。
豊田さんは、以前にもこの言葉を紹介していますので、よほど印象に残っているのだと思います。

 この言葉はどんな仕事にも当てはまると思います。
私の場合は、20代、30代は朝7時過ぎから夜9時、10時過ぎまで、土曜日、たまに日曜日まで遮二無二働きました。
加えて、20代の半ばからはムンバイに年間10回、20代後半から30代は、アントワープ、バンコク等が加わりに年間10〜15回海外出張をこなしました。
宝石バイヤーとして油がのり始めた頃と日本のバブル景気が重なったために、常識では考えられない買い付け回数を短期に経験できたことは、運が良かったと思います。
週末にヨーロッパの8時間も時差があるところから帰って、時差ボケが解消した次の週末かその後の週末に再びヨーロッパに行くという生活を何年も続けることが出来たのは、体力があったからだと思います。
まさに「若いときは肉体が、」そのままです。

 40代からは、景気が悪くなったことから出張の回数は減っていきました。
体力的にも以前のような無茶が出来なるなってきましたので、不景気にも味方され、全くついています。
この頃から、ジュエリーの査定・仲介業務にも乗り出しました。
これは、それ迄の宝石の買い付けとジュエリーのプロデュースの経験があって初めて出来ることです。
まさに「そのうち経験が、」です。
50歳も近くなったこの頃ですが、まだ「経験」でヒットが打てそうです。

 いつになったら「最後は頭が、」になるのでしょうか。
この文章を書きながら、本当は、既に頭で仕事をしなくてはならない歳になっているのではないかと不安になりました。

 さて、皆さんは「肉体」、「経験」、「頭」のどの段階でしょうか。




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