ジュエリーコンシェルジュ原田信之

原田信之 所有されているジュエリーの活用方法をアドバイスする株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリー JAAG(ジャーグ)の代表のブログ。オークションの査定や百数十回に及ぶ宝石の海外買い付け、ジュエリーのプロデューサーとしての経験を生かして、相続や売却、資産性のある宝石の購入のアドバイスをします。

2008年08月

アーガイル鉱山産のピンクダイヤモンドの行方

Argyle Pink Diamond






今年も世界的資源メジャーのRio Tintoが保有するオーストラリアのアーガイル(Argyle)鉱山のピンクダイヤモンドの入札がパース(オーストラリア)で、8月21日から始まりました。
その後ニューヨーク、ロンドン、香港と回って東京でも9月24〜26日に行われます。
最終的にはシドニーで10月1〜2日に行われて、落札者が決まります。

ここ数年、記録的な値上がりをしているファンシーカラーダイヤモンドの中でも、アーガイル(Argyle)鉱山産のピンクダイヤモンドは多くの宝石バイヤーにとって手がつけられないものになっています。
高値が続く理由は、メレーダイヤモンドのように小粒なサイズでも濃いピンク色が採れる唯一の鉱山だからです。
私の好きなアフリカやブラジル産のピンクダイヤモンドは、もともとの色が淡いので1カラットを超えるような大きさから美しくなります。
これは、産地によるエメラルドの色の特徴に良く似ています。
世界的に評価の高いコロンビア産のエメラルドは大きなサイズに魅力がありますが、メレーサイズのような小粒では殆ど色が抜けてしまいます。
これに対してジンバブエのサンダワナ鉱山産のエメラルドは、メレーサイズでも非常に美しい緑色を発します。
また、1カラットを超えるような大粒が殆ど産出しないのもアーガイル(Argyle)鉱山産のピンクダイヤモンドに良く似ています。
今回の入札でも65個(62.46カラット)の内1カラット以上は30個と言うことでも大粒が殆ど採れないことが良く分かります。
そのため、小粒のアーガイルのピンクダイヤモンドの装身具としての生かし方は、ギメル(Gimel)さんのようにたくさん敷き詰めて(パヴェセッティング)連鎖させながら美しさを作り出すスタイルが最適です。

また、アーガイル(Argyle)鉱山は露天掘りとしては既に鉱山の寿命を終えて、坑道を掘って地下の鉱脈を採掘する方法で2018年まで延命する方針が伝えられていることが高値に拍車をかけています。
枯渇が予想されている点は、ロシアのウラル産のデマントイドガーネットと共通です。
このダイヤモンドのように輝くグリーンのガーネットのディマントイドガーネットは、1860年代からロシアのウラル山脈で採掘されました。
当時欧米で人気のあったこの宝石の採掘は、1917年のロシア革命によって中止に追い込まれました。
短い期間に採掘され、美しいものは小粒が主流と言うところが、アーガイルのピンクダイヤモンドを彷彿とさせます。
その後、デマントイドガーネットは、オークション等の還流市場で主に取引されています。
美しいものは1カラット当たり1万ドルを超える値がつけられるものもあります。
しかし、産出量が限られているためにメジャーな宝石になれず、現在ではコレクターズピース(収集家向け)になっています。
アーガイル鉱山産のピンクダイヤモンドも同様な道を辿るのではないでしょうか。
産出が限られているのが宝石ですが、少なすぎると需要も限られるので多くの人が欲しがる宝石にはならないところが一筋縄ではいかないところです。
蛇足ですが、デマントイドガーネットはロシア崩壊後、採掘が再開されて少量ながら市場に出回っています。

CVD合成ダイヤモンド

CVD Diamond and Natural Diamond





ここにサイズ、カラー、クラリティー、プロポーションがほぼ同じの2つのダイヤモンドがあります。
じっくり見比べてみてください。
どちらかが合成ダイヤモンドです。
さて、皆さんにお分かりになるでしょうか。

残念ながら実物をルーペで見ても私には分かりませんでした。

向かって左がCVD合成ダイヤモンドで、右が天然のダイヤモンドです。
天然ダイヤモンドは合成ダイヤモンドのデータに近いものを選びました。

以下、CVD合成ダイヤモンドのデータです。

サイズ:直径約3.5mm(約0.15ct)
カラー:Dカラー
クラリティー:VVS1以上
カット:VG以上

CVDダイヤモンドの特徴は窒素を含まないType兇任后

CVD Diamond on D-Screen





以前ブログで紹介しましたType気Type兇鯀別するD-Screenにかけてみました。

CVD diamond Type a.





やはり、結果は黄色の点滅でType兇任后

CVD合成ダイヤモンドは、通常無色は殆どないとされています。
今回のものも、HPHT(高温高圧)処理で退色させたと思われます。
その証と思われる痕跡がガードルに残っていました。
通常、ガードルは磨りガラス状か、細かいファセットがつけられているかの何れかです。
今回の合成ダイヤモンドのガードルは、その中間でファセットが僅かに残る磨りガラス状です。
初めて見る形状です。
推察ですが、ファセットのガードルをつけた研磨済みのダイヤモンドを高温高圧処理して、ガードル以外を再研磨したのではないかと思います。

CVD Diamond Girdle





左が合成で、殆ど分かりませんが、ガードルに少し面が残っています。
高温高圧処理をすると表面はかなり荒れるそうです。
容易に天然と選別できるようにガードルに痕跡を残したのか、プロポーションが崩れるので手をつけなかったのかは定かではありません。

また、蛍光は殆どありませんでした。
CVD合成ダイヤモンドの特徴のひとつとして挙げられていたオレンジの蛍光には合致していません。

皆さんが一番関心のある天然との鑑別ができるかの問いに対しては、「出来ます」とお答えします。
問題は、費用です。
また、石留めされている小粒のものは更に技術的な問題もあります。
では、消費者の皆さんは最終的に何を信じればよいのかと言うとこれはメーカーに尽きます。
もちろん、お店自体がメーカーの場合もあります。
例えば、合成調味料不使用、天然ダシのみで作っていますと言う食品を吟味するときに一つ一つ検査機関に依頼はしないはずです。
選ぶ基準は、メーカー(お店)だと思います。
宝石の装身具も全く同じで、判断の基準はメーカーです。
しっかりしたメーカーでしたら、使用している材料のTracability(追跡可能性)は取れているので鑑別の必要すらありません。
鑑別有りきではなく、メーカーの選択が最も大切です。
鑑別は、メーカーが再確認するためと還流品等の氏素性がわからないものに必要です。
メーカーを選んで、その刻印を確認しましょう。
刻印があっても、メーカーが分からないような刻印をしているものは責任回避しているので、避けた方が賢明です。

最後は宝石の装身具の買い方になってしまいましたが、メーカー選びの大切さをお伝えしました。

ここで取り上げたCVD合成ダイヤモンドは、弊社のオーナーがRenaissance Daiamonds様より寄贈していただいたものです。
この後は、全国宝石学協会さんに分析していただくつもりです。
CVD合成ダイヤモンドの詳しい説明は、全国宝石学協会さんのホームページにありますのでご覧ください。



宝石の処女性?

4カラットサイズエメラルドカット





最近、ダイヤモンドの処女性を強調している広告や販促物を見ることがあります。
原石から研磨されて初めてジュエリーに使われたことをアピールしています。
氏素性がはっきりすると言うTRACEABILITY(追跡可能性)としては大変意味があります。
産出した鉱山がはっきりしていて研磨以外手が加わっていないことがはっきりしているので鑑別する必要がありません。
では、宝石とって処女性は本当に重要なのでしょうか。
原石がたくさん採れるメレーのような小粒のダイヤモンドは、殆どが新産の原石から研磨されたものですが、大粒になればなるほど還流品の可能性が高くなります。
例えば、アントワープやニューヨークで高品質の5カラットのダイヤモンドをリクエストして10個集まったとしたら、その多くは還流品の可能性が高くなります。
実は商品を見るだけでは、このダイヤモンドが新産であるか還流であるかは私にも分かりません。
また、新産であることを意識したこともありません。
もし新産のものだけでしたら、幾つも見ることは出来なくなります。
稀少性が高くなればなるほど、還流品が多くなります。
宝石の定義が、「美しく稀少なもの」とすれば、宝石の本流は還流品です。

何度も繰り返し同じことを書きますが、宝石に中古と言う感覚はありません。
宝石を留めている貴金属の枠は傷んで中古になりますが、宝石自体はもし傷んだとしても再研磨すると殆ど元に戻ります。
中古住宅と言っても、土地に中古がないのに似ています。

宝石に前の所有者の怨念がついているから中古の宝石は嫌だという方がいらっしゃいますが、稀少性の高い宝石ではナンセンスです。
限りある大自然の創造物に敬意を払って、大切に受け継ぎたいものです。



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