ジュエリーコンシェルジュ原田信之

原田信之 所有されているジュエリーの活用方法をアドバイスする株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリー JAAG(ジャーグ)の代表のブログ。オークションの査定や百数十回に及ぶ宝石の海外買い付け、ジュエリーのプロデューサーとしての経験を生かして、相続や売却、資産性のある宝石の購入のアドバイスをします。

2010年01月

Hopeダイヤモンドに兄弟?

Wittelsbach-Graff-Diamond

数ある稀少性の高いダイヤモンドの中でも最も有名なブルーのダイヤモンドHopeをご存知の方は多いと思います。
ワシントンのスミソニアン博物館に展示されているので実際にご覧になった方もいるでしょう。
以前に私のブログでも紹介しました。
もし、このHopeに同じ原石から研磨されたもう一つの大粒のブルーダイヤモンドが存在しているとしたらどうでしょう。

この歴史的発見が現実になるかもしれません。

2008年12月11日のブログで紹介したWittelsbach DiamondがGraff Diamondsによってリカットされて新たにWittelsbach-Graff として生まれ変わりました。(上の写真はリカット後のWittelsbach)

○オリジナル
 Wittelsbachダイヤモンド
 35.56カラット クッションシェイプ Fancy Deep Grayish Blue VS2
 
○リカット後
 Wittelsbach-Grafダイヤモンド
 31.06カラット クッションシェイプ Fancy Deep Blue Internally Flawless

大きく口を開けたキュレットを3割小さくして輝きを改良した結果、Fancy Deep Grayish BlueからFancy Deep Blueとグレイ味が抜け、稜線やガードルのチップを取り除いてVS2からInternally Flawlessになっています。

この2つのダイヤモンドは、約300年前の同時期にインドから産出されたことが歴史的に知られています。
そのため以前から、同じ原石から研磨されたのではないかと言う説がありましたが、その時代にはソーイング(Sawing)の技術がないことから懐疑的に見られていました。
自然に割れて別々に産出されたと考えることもできますが、かつて一度も一緒に並べられたことがなく検証することは不可能でした。

このWittelsbach-Graffダイヤモンドが来週1月28日(木)より8月の1日(日)までワシントンのSmithonian National Museum of National HistoryでHope Diamondと一緒に展示されます。
2つのダイヤモンドが300年以上の時を経て初めて出会うことになり、兄弟なのか恋人なのか想像を掻き立てられます。
今回は博物館で専門家がデータを分析するので結論がでるかもしれません。
個人的には、色の特徴から同じ原石から生まれた兄弟である可能性はあると考えます。
そしてその可能性を信じたいとも思います。

Graff氏が最初からこの展示を考えて落札したとすると、破格の落札金額も理解できます。
やはりLaurence Graff氏は稀代のダイヤモンド商人です。
20世紀のダイヤモンドの象徴であるHarry WinstonがHopeを預かって展示したように、Wittelsbachを同じステージに上げたことでGraff氏がダイヤモンドの次世代のリーダーであることを知らしめているようです。


The Spirit of Beauty

The Spirit of Beauty VCA

早いもので、2009年10月31日から始まったヴァンクリーフ&アーペルさんによる、ブランドの100年の歴史を振り返る展覧会ザ スピリット オブ ビューティー展も残り3日になり、この期を逃しては、と急いで行ってきました。

ヴァンクリーフさん所蔵のアーカイブコレクションに、世界中から集めたプライベートコレクションを加えた約300点は見ごたえがありました。

2006年にパリのヴァンクリーフさん本店のインテリアデザインを務めたフランス人建築デザイナー、パトリック・ジュアン氏による独創的な舞台設定によって、見る者を夢の世界に誘います。

私は一般の方の憧れの視線とは別に、ジュエリーが作られた年号に注目し、以下の変遷を見ていきました。

1.細工や技術
2.材料宝石の形
3.宝石の処理

結果は、

1.年代が若いほど細部にまできちっと手が入っています。
  かけた時間の差は歴然です。

2.細かいダイヤモンドは、現代に近づくほどファンシーシェイプが
  少なくなり、ラウンドが多くなってきます。
  経営の効率化が進んでいます。

3.1960年代以前のルビー、サファイアは無処理で透明度が高く、
  一つ一つに個性があります。
  1970年代以降は加熱が中心です。
  全体の色は揃っていますが、透明度は以前のものに敵いません。
  
  同じケースにルビーのミステリーセッティングで1966年と2008年の
  ジュエリーが一緒に展示されているものがあります。
  下の写真のブローチ(1966年)とネックレス(2008年)です。
  ご興味のある方は比較して見ると無処理と加熱の違いがわかります。
  どちらもビルマ(ミヤンマー)産であり、古い方はモゴック鉱山のもの、
  最近の方はモンスー鉱山のものと思われます。
  3枚の葉のクリップ1966年リュバンネックレス2008年











まだご覧になっていない方は、お急ぎ下さい。

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