ジュエリーコンシェルジュ原田信之

諏訪貿易が提供しているジュエリーの相続資産の査定・仲介のサイト「宝石ドットコム」の責任者:原田信之のブログ

2010年02月

Feb 2010 Antwerp 4

Antwerp

○Mumbaiの重要性

アントワープに居ながらインドのMumbai(Bombay)の重要性を語るのは気が引けますが、避けて通ることが出来ません。
アントワープが研磨地から集荷地へとその機能を変えて久しいのですが、いまや集荷地としての地位も危うくなっています。
工賃の高騰により研磨が出来なくなってからも、多くの原石の取引が行われていることと、ユダヤ系の会社がイスラエルや東南アジアで研磨したダイヤモンドをアントワープに集めて販売していたので、その地位も保たれてきました。
90年代以降、インド系の資本が乗り込んでユダヤ系から主導権が移りました。
但し、その頃はDTC(De Beers)の原石販売のシェアが高く、インド系の躍進を恐れて、大粒石やファンシーシェイプに向く原石はインドには殆ど渡しませんでした。
21世紀に入り、DTCのシェアが低くなり原石の調達に制限がなくなると、インドの潜在能力が開花しました。
同時期にレーザーによるソーイングやコンピューターによる厳密な歩留まり管理が始まり、古典的な研磨地の優位は一気に失われました。
結果、あらゆるサイズ、種類のものがインドで研磨されてアントワープやニューヨークに持ち込まれました。
何故、インドで研磨されたダイヤモンドがアントワープやニューヨークに持ち込まれるのでしょうか。
それは、バイヤーが集まると言う以前に、GIAやHRDという国際的なレポート発行会社の存在があったためです。
その最後の砦もGIAのMumbai支店の開店で崩れ去りました。
規模の大きいインド系の会社は主な消費地に支店を持っています。
インドでGIAのレポートがつけられたダイヤモンドはアントワープやニューヨークを経由しないで直接消費地に送られることが多くなります。
その結果、アントワープにもテルアビブにも商品が減ってきています。
現在、Mumbaiが抱えている問題は、快適性に欠けるという点だけです。
世界のバイヤーがかの地で快適に過ごす事が出来たら、Mumbaiの地位は更に揺るぎのないものになるでしょう。
発展著しい中華圏や中東に近く、日本とヨーロッパの中間に位置していることも優位に働くでしょう。
実は、20年以上前にMumbaiの空港近くに新しいダイヤモンド取引所(Bharat Diamond Bourse)の開設が計画され、実際に出来上がっています。
既に殆どの会社が現地に部屋を確保していますが、周辺インフラが整っていないことと中途半端な数の会社が移った時のデメリットを考えて、未だオフィスの移転はこう着状態です。
いずれリーダーが現れて、一斉に移動が始まり、空港も含めて周辺のインフラが整備されれば、鬼に金棒のダイヤモンドセンターが登場します。
筋書き通りに事が運ぶか分かりませんが、これからもインドの重要性が変わることはありません。

Lollipops

Lollipops close up

○ちょっと一息

これは何でしょうか。
Fancy Orangeのダイヤモンドの顕微鏡写真?
それともマンダリンガーネット?

いいえ、これはただのキャンディーのクローズアップです。


アントワープのレストランのお茶うけについてきたLollipopsです。
日本語では「ぺろぺろキャンディー」とでも言うのでしょうか。

ヨーロッパの食べ物の造形には惹かれるものがあります。
如何にもにも1本1本手作りで作りましたと言わんばかりの好い加減の姿をしています。
もちろん大量生産されたものですが、日本のように型に入れて同じに仕上げるのと大違いです。
どこか懐かしいものを感じさせます。

Lollipops


日本のケーキはどれも綺麗で揃っています。
味も洗練されていて申し分ないのですが、やはりパリの街角にあるものと比べると物足りません。
どこかでちょっと力が抜けていて、逃げ場があります。
あちらのお洒落も同様に全部決めすぎないでわざと隙を作ります。

宝石は、本来自然が作ったものなので、不完全でもちろん隙もあります。
我々が作る装身具はどうでしょうか。
がちがちになりすぎていないでしょうか。
このキャンディーのような装身具を作りたいものです。




Feb 2010 Antwerp 3

Fancy Intense Purplish Pink

○鵜呑みにしない その2
昨年頂いたお問い合わせにやっと答えることができる良いサンプルが見つかりました。
大変お待たせいたしました。

上の写真は、アントワープの友人のところで撮影しました。
彼はファンシーカラー専門の業者です。
大きさを問わなければ、考えられる殆どの色を持っています。

ご覧になって、皆さんにも一つ一つの色が異なることは分かりますね。
どれも1カラットサイズです。

カラーグレードは、3つとも全く同じです。

Fancy Intense Purplish Pink

これをご覧になれば、カラーグレードだけで美しさを判断できないのが良くわかると思います。

ブラウン味の強いもの、全体に色が乗っているもの、中心に色が集中しているものとさまざまです。

更に私は、Fancy Vivid Purplish Pinkよりも美しいFancy Intense Purplish Pinkをいくつも見たことがあります。

カラーグレードだけではありませんが、レポートの鵜呑みは禁物です。

美しさは、自分で判断します。

Feb 2010 Antwerp 2

GIA Grading Report

○会社経営としてのLabo

昨年よりアントワープのマーケットにGIAのレポート(ドシエ含む)が氾濫しています。
ラウンド、ファンシーシェイプを問わず0.2カラットサイズのようなメレーサイズにまでレポートがついてきます。
お陰でブローカーもバイヤーも一苦労です。
かつては、1つのパーセルに何十個と入っていたので、ブローカーは背広の内側に収納できる程度の大きさのケースで十分でしたが、現在は1つ1つにレポートをつけて持ち歩かなくてはならなくなり、大きなアタッシュケースが必要です。
バイヤーもパーセルから大きな紙の上にザラっと空けて、何十個も一遍に検品するので作業が早く出来ました。
現在は、1つ1つをパーセル(タトウ紙)から出して行うので時間がかかり、量が多いとこの作業だけで腱鞘炎になりそうです。

今回は、1カラットサイズから2カラットサイズまでVSクオリティーを買ってみようと思い2日間で300〜400個ほど集中的に見てみました。
結果は愕然とするものでした。
いつもの基準で買うことが出来るものが殆どありません。
クラリティーグレードは内包物の多寡の程度ですが、VS-SIクラスの基準が全く変わっていました。
若干乱暴ですが、一言で言うとグレードが一つずつ上がっています。
例えば、以前のSI1がVS2に、VS2がVS1に、という具合です。
甚だしいものは、SI1がVS1と2グレードの差が出ています。
VVSクラスはそれほどの変化が感じられなかったので、VSからSIクラスの幅が低いほうに向かって広くなっています。

私のダイヤモンドの買い付けの基本は、カラーはシェイプと大きさでターゲットが異なりますが、クラリティーグレードは出来るだけVSクラスを中心に欠点がなく特徴となるインクルージョンを選んで買っています。
もちろん透明度が高いことを確認したうえでの選択です。
今までもVS2という範囲は、欠点となる内包物が多いために50個に1つぐらいしか選ぶことが出来ませんでしたが、今回の変更ではVS1も含めて200個に1個ぐらいしか買うことが出来ません。

繰り返しお伝えしますが、「レポートは鵜呑みにしない」で下さい。
レポートでは「美しさ」は分かりません。
「欠点」なのか「特徴」なのかも本物のプロでなければ分かりません。
このような事実が分かれば、4Cを並べたインターネットのサイトで購入するような愚かな事は出来ないはずです。

蛇足ですが、GIAに確認しても変更の確認は出来ないでしょう。
GIAはインドのMumbaiで教育とレポート発行のサービスをスタートさせました。
2カラット未満は殆どMumbaiで行われているとも言われています。
人件費から考えると無理もありませんが、スタンダードの変更はブランドにキズがつきます。
競争相手のグレーディング範囲を眺めながら行うような商業主義はGIAには似合いません。




Feb 2010 Antwerp 1

24th FEB 2010 Antwerp View

今年は世界的に厳しい寒波に襲われていますが、ここアントワープも先週は雪で交通がマヒ状態でした。
緯度からすると結構な寒さなところですが、普段は意外と雪は多くありません。
そのため、ひとたび大雪が降ると慣れていないので自治体の対応が遅れてパニックになります。
幸い今週は、雨で済みそうなので、一安心です。
但し、時折吹く突風に飛ばされそうになります。
もちろん、傘は役に立ちません。
何度も濡れたドブネズミのようになりました。

さて、こちらでは昨年から続く原石高のポリッシュ(研磨済み)安に苦しんでいます。
一昨年の後半のリーマンショック以降、過熱した原石価格も急激に下落して一旦は収束したように見えました。
2009年に入って暫くすると、再び上昇してリーマンショック前の状況に近づく勢いです。

それに引き換え、ポリッシュの価格は世界不況の影響で原石価格の上昇に付いて来ていません。
中国、インド等の一部の新興国は元気ですが、全体の需要不足は否めません。
失われた15年の日本からの需要は底這状態ですが、不況の震源地の米国の落ち込みは酷く回復過程とは言いがたいものがあります。
米国の経済指標の向上はダイヤモンドの需要喚起には程遠く、先が見えません。
研磨業者にとって辛い期間が続きます。
体力のないものは淘汰を余儀なくされるでしょう。

原石を傘下の研磨業者に独自の価格表で配給のような形で供給しているのは、DTC(De Beers)社だけです。
他の主な供給会社は、入札制に切り替えています。
DTCは未だ4割近い原石市場での占有率を保って影響力を堅持していますが、他の6割以上のプレーヤーが入札で価格を市場に委ねているのをみると、崩壊前のソビエト連邦のように見えます。
また、原油価格の主導権がメジャーからOPEC(石油輸出国機構)に移ったように、鉱山会社より産出国の意見が強くなる傾向を見ても、DTC(De Beers)方式は長く続かない気がします。


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