ジュエリーコンシェルジュ原田信之

原田信之 所有されているジュエリーの活用方法をアドバイスする株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリー JAAG(ジャーグ)の代表のブログ。オークションの査定や百数十回に及ぶ宝石の海外買い付け、ジュエリーのプロデューサーとしての経験を生かして、相続や売却、資産性のある宝石の購入のアドバイスをします。

2010年03月

ジュエリー研究会MUSUBU

セミナー風景

ジュエリー業界に新しい勉強会が発足しています。

ジュエリー研究会MUSUBU

会のタイトル「MUSUBU」(結ぶ)通り、職種も企業の垣根をも飛び越え、集い学び語り合うことを目的にしています。
ジュエリーに携わっている方ならばどなたでも参加できるボランタリーな集まりです。
2ヶ月に1回程度のペースで、ゲスト講師によるセミナー+参加者による懇親会を開催することが主な活動です。
もっと広く意見を聞きたい方やネットワークを広げたい方は参加されては如何でしょうか。

私も2回目のセミナーの講師をいたしました。
満員の会場はやる気のある方ばかりで、あっと言う間の2時間でした。
ご興味がある方は、セミナーレポートをご覧下さい。
プロのライターさんがまとめていますので、正確かつ詳細です。

第2回セミナー【宝石の品質の見分け方と価値の判断 〜宝石を見るための7つの要素〜】


次回のセミナーは4月10日(土)です。
とてもクリエイティブな方です。
ご興味があれば、事務局までお問い合わせ下さい。



プロの道具箱(5)

パーセル

−アンチ使い捨て文化−

○パーセル(Parcel paper)

宝石を包む紙です。
英語では正式には「parcel paper」と呼びますが、通称「パーセル」です。
日本語では「畳紙」(タトウ紙)です。
和服を包む紙と同じです。

三層構造のパーセル
一般的なサイズは折りたたんだ状態で約4.5×8センチで、広げると約19×15.5センチと縦長になります。
基本は、3枚構造です。
一番外側の紙は一般的なコピー用紙の半分以下の厚みです。
この紙にメーカーの透かしが入っているものもあります。
内側の2枚はグラシン紙とかパラフィン紙と言われている光沢のある薄手の紙で、伝統的なタイプのパーセルでは、内側に少し濃い青色、真ん中に少し淡い青色が使われています。
何故、こんな構造になっているのか、誰にも訊ねたことはありません。
商品のすべりと耐久性が良いことに加えて、薄くて強く跳ね返らないのでダイヤモンドが飛ぶのを防ぐことも考慮されているのでは、と私は推測しています。

パーセルの色も宝石によって異なります。
ダイヤモンドには、この淡いブルーかもう少し白いものが使われ、カラーストンには黄色のパーセルが使われますが、基本の構造は同じです。

パーセルに鉛筆で書かれた情報
たたんだパーセルの最後の折りたたんだ部分に中身の情報を書き込みます。
書き込みは鉛筆(日本ではシャープペンシル)が基本です。
決してボールペン等で書き込むことはしません。
何故なら、入っているダイヤモンドの個数や量(カラット)に変更があれば、消しゴムで消して書き換えて使うからです。
何度も何度も書き換えて、多少汚れても使い続けます。
中には、折り目が擦り切れているものも珍しくありません。
恐らく、ユダヤ系の人たちの物を大切に使う習慣が根強く残っているためだと思われます。
ダイヤモンドの入ったパーセル
二つに折った紙の中には、このようにダイヤモンドのルースをむき出しのまま入れます。
これを両端を内側に折って、縦に二度巻き込むように畳むと出来上がりです。
両端を折るときにダイヤモンドが内側にきちんと入っていれば、直径2ミリに満たないメレーダイヤが大量に入っていても漏れることはありません。
パーセルを開けたり、畳んだりする時の手つきで年季が分かります。
パーセルを主に使っているのは、アントワープやテルアビブの集荷地とそこから輸入している卸の業者までが殆どです。
その先は、ボールペンで文字の書けるビニール袋に入れて管理されることが好まれます。

パーセルの束とフルート
これは、良く使われているRubin社のパーセル一束です。
脇にあるのは、フルート(Flutes)と呼ばれている小分け用のパーセルです。
パーセルのダイヤモンドを分類して保管します。

パーセルの中のソート
買い付けの場面では、上の写真のように段階的に分けたものを3枚の紙の間に一時的に入れて交渉することもあります。


ケースに入ったパーセル
このように専用のケースに並べられて保管されます。
かなり歴史を感じるものも見えます。

パーセルは決して安くはありません。
ビニール袋とは比較しようがないくらいの差があります。
但し、ビニール袋は直ぐにすすけてしまうので、使い捨てに近くなります。
その点、パーセルは繰り返し使うことが出来ます。
世の中にはこんな風に、頑なに紙の包みを使い続ける人たちがいます。
我々の使い捨て文化を反省させられます。


○プロの道具箱(1)
○プロの道具箱(2)
○プロの道具箱(3)
○プロの道具箱(4)-1
○プロの道具箱(4)-2
○プロの道具箱(4)-3


QUALITY SCALE & ROUGH DIAMONDS

Quality Scale

来る3月25日(木)より3月31日(水)まで東武百貨店 池袋店 6階9番地 宝飾サロンにて行われる「SUWAフェアー」でQUALITY SCALEの実物が展示されます。
今回は、アレキサンドライト、キャッツアイ、インペリアルトパーズ、パライバトルマリン、ピンクダイヤモンド、メレーダイヤモンドの6つのスケールを公開します。
「宝石1,2」でお馴染みのクオリティスケールが近くでご覧いただけます。
通常、一般には公開されていませんので、ご興味のある方はこの機会に是非ご覧下さい。

QUALITY SCALE(クオリティスケール)とは「品質のものさし」です。

縦軸は明暗度(トーン)を表しています。
原則的に7〜1の7段階で表しています。
7:濃い
5:中位
3:淡い
1:極淡い
0:無色のダイヤモンド

横軸は美しさでS,A,B,C,Dの5段階で表しています。
S:輝きのある特に美しいもの
A:かなり美しいもの
B:美しいもの
C:多少美しさに欠けるもの
D:美しさに欠けるもの

クオリティスケールは宝石種、原産地、処理の有無ごとに異なります。
例えば、加熱のミヤンマーモゴック産のルビーと無処理(加熱痕跡なし)のミヤンマーモゴック産のルビーは別々のスケールになります。

それぞれのスケールを「ジェムクオリティ」「ジュエリークオリティ」「アクセサリークオリティ」の3つのゾーンに品質を分けて価値を判断します。
詳しくは、宝石辞典をご覧下さい。


ダイヤモンド原石の透明度

併せてSawable(ソーヤブル)、Makeable(メイカブル)、Clivage(クリバージ)に分類されたダイヤモンド原石の透明度のチャートも展示されます。
これは、新著「ダイヤモンド 原石から装身具へ DIAMONDS ROUGH TO ROMANCE」の原石の透明度(P78)で紹介されているチャートと同じ考え方で作ったものです。



マンダリンガーネット ダイヤモンドリング

Mandarin Garnet 正面アップ

裸石からのオートクチュールのジュエリーが出来上がりました。
お客様の了解をいただいたので、ブログにアップします。

6カラットサイズMandarin Garnet

ガーネットには無色から虹の七色までブルー以外の殆どの色が存在します。
その中で、みかんのような色のガーネットをトレードネームで「マンダリンガーネット」と呼びます。
鮮やかなオレンジのガーネットが市場にまとまって登場したのは1992年のことで、比較的新しい宝石です。

当初の産地はアフリカのナミビアで、彩度の非常に高いオレンジ色を産出しました。
但し、インクルージョン(内包物)が多いのも特徴で、透明度が高くないものが殆どでした。
残念ながら現在は、ナミビアからの産出は僅かです。
代わって登場したのがナイジェリア産です。
ナイジェリア産のマンダリンガーネットはナミビア産に彩度は及びませんが、透明度が高いのが特徴です。
研磨はドイツのイーダーオーバーシュタインです。

この6カラットサイズのナイジェリア産のガーネットは、透明度が高いことは言うに及ばず、珍しく彩度も高い稀有な品質です。

私の仕事は、宝石の美しさを引き出し、流行に左右されないスタイルに仕立て上げることです。

構想のポイントをいくつかご紹介します。

Mandarin Garnet 1

まずメインストンが比較的大きいのに対して、お客様の指のサイズが9番に満たない事から、華やかさを演出するダイヤモンドを多く使うことが出来ません。
メインストンの大きさを際立たせる控えめなサイドストンを採用しました。

Mandarin Garnet サイドアップ

イエローゴールドの爪でセットすることで、彩度の高いオレンジ色に味わいを与えました。
上から見るとガーネットだけが浮かび上がるように下方に絞り込まれた4本の爪は、強弱がつけられて伸びやかさを感じさせます。
ダイヤモンドの先端から伸びた爪が、アッパーベゼルとローワーベゼルの間に開けた大きな空間をバランスよく分断して強度も確保しました。

Mandarin Garnet サイドストン

変形トライアングルシェイプのダイヤモンドは、メインストンのオーバル輪郭に応じて弧を描いているものを選びました。
ダイヤモンドでは外側に丸いものは一般的ですが、内側に弧を描いているものは稀です。

Mandarin Garnet エッジ

ダイヤモンドの先端を袋状の爪で覆い、先端の延長線のリングの腕(シャンク)に峰を立てることによって違和感なくよりシャープな印象に仕上げました。
白いプラチナが無色のダイヤモンドの透明度を強調します。

Mandarin Garnet 仕上げ

宝石の裏側の外から見えない部分のプラチナもピカピカに仕上げることで、宝石をより輝かせ完成度を上げました。
Mandarin Garnet 指なじみ

指なじみには、セットされた宝石の形を模った空間を開けました。

Mandarin Garnet 5

太陽が背後から照らした写真です。
まさに日の出の太陽のような眩しさを感じるリングです。


Fancy Blue Diamond Melee size

ファンシーブルーダイヤモンドメレーサイズ
ファンシーブルーダイヤモンドクローズアップ

大変珍しいメレーサイズのファンシーブルーダイヤモンドです。
オーストラリアのアーガイル(Argyle)鉱山産です。
ご覧のようにブルーと言うよりグレーの方が近いので、業者はメタリックブルー(metallic blue)と言います。
このサイズのブルーダイヤモンドで鮮やかな青色は殆どありません。

南アフリカやブラジル、古くはインド産のグレー味の少ないブルーの色の起源はホウ素(boron)ですが、グレー味の強いオーストラリアのアーガイル鉱山の起源は水素(hydrogen)です。

価格は、近年のカラーダイヤモンドの流行で同じサイズのカラーレス(最高品質)の10〜20倍と法外な価格がつけられていますが、珍しいだけでジュエリーに仕立てても美しいとは言い難いものです。
まさにコレクターアイテムと言えるでしょう。

このようにアントワープのマーケットは、ダイヤモンドに関する様々な要望を満たしています。

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原田信之

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