ジュエリーコンシェルジュ原田信之

原田信之 所有されているジュエリーの活用方法をアドバイスする株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリー JAAG(ジャーグ)の代表のブログ。オークションの査定や百数十回に及ぶ宝石の海外買い付け、ジュエリーのプロデューサーとしての経験を生かして、相続や売却、資産性のある宝石の購入のアドバイスをします。

2010年06月

プロとしての選択

顕微鏡

<全宝協さんに鑑別依頼する理由>

ダイヤモンドグレードかさ上げ騒動に揺れている全国宝石学協会さん(以下、全宝協さん)に対し、業界では厳しい対応を取る人が多い状況です。
そのような状況の中で私は全宝協さんに鑑別の依頼を続けています。
もともとダイヤモンドグレーディングは依頼していないのでその方針は変わりませんが、鑑別に関しては以下の理由で続けています。
尚、社内用のデータのための鑑別なので、鑑別書の作成は殆ど依頼していません。

1.鑑別専門会社の必要性
2.信頼できる世界レベルのプロがいる。
3.代替できない。


1.鑑別専門会社の必要性

新産の宝石でトレーサビリティ(追跡可能性)が取れているものは鑑別は不要ですが、還流品には不可欠です。
私が査定しているオークションの商品のような還流品には専門に鑑別を行う会社が必要です。
最近の処理は高度になっているので、専門学校で習うレベルの鑑別では判断が難しいものが多く、最新の処理を看破するためには高額な専門の機材を必要とするため、その機材を揃えている会社が必須条件です。
全宝協さんの機材は条件に合致しています。


2.信頼できる世界レベルのプロがいる。

全宝協さんのLaboには信頼できる鑑別のプロの方がいます。
鑑別は、組織としての力より個人の技術レベルに負うところが大きく、病院選びと同じでどの病院よりも誰(医者)がいるかでレベルが決まります。
また、処理と原産地の鑑別においても、世界的に有名なGUBELINやSSEFのスイス勢の伝統的なアプローチに対して、科学的データの蓄積を重視した全宝協さんの方法は世界でも注目されています。
処理と産地鑑別には絶対はありませんが、データの蓄積が進むと精度は更に上がっていきます。
世界レベルで認められる鑑別会社が日本でも必要です。


3.代替出来ない。

全宝協さんのレベルの鑑別を代行できるところがありません。
最終的にはこの理由が決定的です。

宝石のプロとして仕事の質から全宝協さんに依頼しています。





婚礼用指輪から婚約記念日の指輪へ

立爪リング

結婚して二人で新たな生活を始める時は、様々なものを購入しなくてはならないのが一般的です。
住居(含賃貸)、家具、寝具、食器、家電などが代表的でしょう。

それらを購入するときには以前は婚礼用家具5点セット、婚礼用寝具セット等の新婚向け商品が定番だったのかもしれませんが、現在では多くの人が一般の商品の中から好きな商品を選んで購入しています。
お店も予算や大きさで新婚向けの商品を括っていることはありますが、婚礼専用の商品と言うのは殆どありません。

翻ってジュエリーはどうでしょう。
どの小売店でも立爪リングを中心としたブライダル専用リングが沢山揃っています。
更にはBridal Ring専門店なるものも林立しています。
Bridal Ringを直訳すると「婚礼用指輪」です。
もともとが儀式用と考えると、結婚式後の日常生活の使用には適さないのも頷けます。
他の商品では既に殆ど存在しない婚礼用が、ジュエリーにあること自体が時代遅れです。

では、結婚に指輪は必要ないのでしょうか。
指輪は他の装身具に比較しても思いのこもった特別な装身具です。
その証拠にウエディングドレスと同じようにネックレス、ティアラはレンタルが主流ですが、指輪のレンタルは殆どありません。
婚約や結婚の記念日に指輪を贈ることは、今後もなくならないでしょう。
愛情のこもった記念の指輪です。
儀式の専用ではなく、生涯楽しめて、さらに次の世代に受け継がれる指輪を慎重に選んでください。



世界のダイヤモンドグレーディング事情

GIA Grading Report

前回ダイヤモンドグレードかさ上げ騒動における問題の本質を書きましたが、世界のグレーディングレポートはどうなっているのか見てみましょう。

どの国にもその国の鑑別会社(ラボ)が数多く存在します。
日本にも景気の良いときは大小100を超えるラボが存在したとされているぐらいです。

国際的に拠点を構えてグレーディングレポートを発行している会社は、ダイヤモンドグレーディングシステムを開発したGIA(Gemological Institute of America)を筆頭にIGI(International Gemological Institute)、EGL(European Gemological Laboratory)と言ったところがあります。
それにアントワープのラボでヨーロッパでのシェアの高いHRDを加えた4社が国際的に有名です。
世界のダイヤモンド販売の過半を占める米国ではローカルと言えどもAGS、EGL USA(EGLとは別資本)等の規模の大きい業者も存在します。

では、それらのラボはグレード基準を統一して標準化された作業を行っているのでしょうか。
答えは、「NO」です。
グレーディングシステムを作ったGIAの4Cの概念に準拠して行っていますが、それぞれが独自のグレーディングを行っているのが現状です。
用語が一緒でも基準はそれぞれです。
分析する要素も同じではありません。
*Diamond Grading Comparison Matrix
また、同じラボでも常に一定ではなく、人間の見るものですので時期により若干の幅があります。
ラボによって異なり、同じラボでも一定ではないと言うことです。
それぞれが独立した営利団体でお互いに競争しているので基準を統一すること自体無意味です。

アントワープ、ムンバイ、テルアビブ、ニューヨークと言ったダイヤモンドセンターでは、これらの何れかのグレーディングレポートがついたダイヤモンドが取引されます。
プロのバイヤーは、各ラボの現在のグレーディングの範囲と特徴を熟知しています。
表記がどうであれ、ダイヤモンドの品質は価格相応です。
世の常として、「安くてよいもの」はありません。
極端に安く見える宝石は要注意です。
もしレポートがついていても、何よりも自分の目で美しいと感じたものを購入することが大切です。


Christie's Hong Kon Auction 4

Natural Pearl Necklace

落札価格(手数料込み):HK$10,180,000 (US$1,312,259) 約1億2,000万円

直径3.4〜10.4ミリのマルチカラー天然真珠(255個)の4連ネックレスです。
天然真珠であることはもちろん、形が良く色合わせが良く稀少性が非常に高いネックレスです。
リザーブ価格をクリアしたことが現在の過熱した市場を表しています。
Natural saltwater pearl no indication of color enhansment by Gubelin


〇Sapphire Diamond Ring
17.29ct Burma Sapphire

Sapphire 17.28cts Cushion-shaped Burma Origin
No indication Heating by Gubelin
ビルマ産サファイア 加熱痕跡なし

落札価格(手数料込み):HK$4,340,000 (US$561,697) 約5,100万円
1カラットあたり約US$32,506 約300万円

Gem Qualityのビルマ産の無処理(加熱痕跡なし)の大粒サファイアには最近このような価格が付きます。

〇Pink Sapphire Diamond Ring
12.95 Pink Sapphire No Heat SSEF

Pink Sapphire 12.95cts Cushion-shaped Burma Origin
No indication Heating by SSEF
ビルマ産 ピンクサファイア 加熱痕跡なし

落札価格(手数料込み):HK$1,220,000 (US$157,896) 約1,400万円
1カラットあたり約US$12,193 約110万円
高額落札ではありませんが、ビルマ産の無処理(加熱痕跡なし)の美しいものの相場のご紹介です。
スリランカ産、マダガスカル産にもピンクサファイアはありますが、ビルマ産のピンクは稀少性が高く高値で取引されます。

以上、クリスティーズ香港落札結果の一部ご紹介でした。

Christie's Hong Kon Auction 3

〇Diamond Ring (Golconda)
10.05ct D IF Type2a GIA Golconda

Diamond Old chshion-shaped 10.05cts
D color Internally Flawless Type2a GIA
Gubelin appendex : evoke Golconda
落札価格(手数料込み):HK$13,204,000 (US$1,702,070) 約1億5,600万円
1カラットあたり約US$169,360 約1,500万円

典型的なオールドカットで透明度が高く、大粒なのでGubelinのevoke Golcondaの付記が付いています。
エスティメイトUS$1,250,000-2,000,000からすると、オークション会社はもう少し伸びると思っていたようです。
Type2aだからではありませんが、透明度は抜群です。

〇Blue Diamond Ring
5.01ct HS Fancy Vivid Blue VS2

Diamond Heart-shaped 5.01cts
Fancy Vivid Blue VS2 GIA
落札価格(手数料込み):HK$36,500,000 (US$4,705,054) 約4億3,000万円
1カラットあたり約US$939,133 約8,600万円

大粒のブルーダイヤの相場が高値安定しています。
以前はあまり見られませんでしたが、高値が続くと商品が出てくるものです。
最近のオークションの目玉の常連です。

〇Peair of Yellow Diamond and Colorless Diamond Ring
PS 3.09 F. V. Y. VVS2 3.11 D VS1 together

PS 3.09 F. V. Y. VVS2 3.11 D VS

Diamond Pear-shaped 3.09ctd Fancy Vivid Yellow VVS2
Diamond Pear-shaped 3.11cts D VS1
残念ながら不落でしたが、トワイモア−toi et moi (you and me)−スタイルのダイヤモンドリングです。
大粒でセパレートタイプが新鮮でしたのでデザインのご紹介です。


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