ジュエリーコンシェルジュ原田信之

原田信之 所有されているジュエリーの活用方法をアドバイスする株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリー JAAG(ジャーグ)の代表のブログ。オークションの査定や百数十回に及ぶ宝石の海外買い付け、ジュエリーのプロデューサーとしての経験を生かして、相続や売却、資産性のある宝石の購入のアドバイスをします。

2010年07月

The King of Diamond

GRAFFさんより超弩級のニュースが入りました。
2つの世界記録を塗り替えたダイヤモンドの登場です。

○The Graff Constellation
102.79カラット
ラウンドシェイプ
ブリリアントカット
Dカラー
Internally Flawless

The Constellation diamond


世界最大のラウンドシェイプ ブリリアントカット Dカラー Internally Flawlessのダイヤモンドです。
以前の記録は、同じくGraff Daiamond社の「 The Icon 」 90.97ctでした。

史上20番目に大きい原石(478カラット)から1年以上もの歳月をかけてカットされ、グラフ社の創業者で現会長のローレンス・グラフがそれを初めてルーペで覗いた時、「1つのダイヤモンドの中に空に浮かぶ全ての星が見えるようだ」と呟いたことからThe Constellation=星座という名前がつけられたそうです。

Constellation roughLG holding Constellation diamond










○The Delaire Sunrise
118.08カラット
エメラルドカット
Fancy Vivid Yellow

Delaire Sunrise diamond

世界最大のエメラルドカット Fancy Vivid Yellowのダイヤモンドです。
「Delaire」はGraff氏が所有しているワイナリーとリゾートの名前なので、そこからの日の出をイメージしたのではないかと思います。

Delaire Sunrise rough low resLG with Delaire Sunrise









まさに21世紀のKing of Diamondの名に相応しいダイヤモンドです。
Graff氏の躍進は、まだまだ続きそうです。



GRAFFTI

GRAFFITI

GRAFFさんより夏号の広報誌をいただきました。
手に取りやすい約26センチ四方の正方形にこだわりを感じます。
厚手の上質紙に写真が美しい充実の80ページです。

2008年暮れに話題になったWittebach Diamondの記事がありましたので、ご紹介します。

○Wittebach Diamond
 35.56カラット 
 クッションシェイプ 
 Fancy Deep Grayish Blue VS2

2008年12月10に行われたクリスティーズ ロンドンのオークションで£16,393,250 ($24,311,190)のダイヤモンド価格におけるオークション記録でGraff氏が落札しました。

その後、グラフ ダイヤモンドによる再研磨によりカラーとクラリティーの向上が図られ以下のデータに生まれ変わり、名前もWittelsbach-Graff Diamondと命名されました。

●Wittelsbach-Graff Diamond
 31.06カラット 
 クッションシェイプ 
 Fancy Deep Blue Internally Flawless

The Wittelsbach-Graff certification at GIA


現在は、今週末の8月1日まで米国ワシントンのスミソニアン博物館にてHope Diamondと同じ部屋に展示されています。

Wittelsbach Daimondの大きさは郵便の消印サイズとありますが、Graff氏(恐らく)が指の上に載せている写真がありましたのでご覧下さい。

The Wittelsbach-Graff on finger

Wittelsbach Daimondの歴史についての記述もありましたので、抜粋して記します。

1664年にスペインのPhilip 4世が娘のInfanta Margarita Teresaとオーストリアの皇帝Leopold 1世の婚約のお祝いに贈ったのが最初の記録として残っています。
その後、バイエルンの下院議員のWittelsbach氏が所有したことが名前の由来となりました。
第1次大戦後バイエルンは共和国になり、Wittelsbach Daimondは1931年にクリスティーズのオークションに出品されましたが、競売の前に姿を消しました。
1958年のブルッセルの万博で再登場しますが、当時は単にBlue Diamondとして展示されていました。
1962年、ベルギーの宝石専門家によって、そのBlue DiamondがWittelsbach Diamondであることが判明します。
そして、2008年12月10日のクリスティーズ ロンドンのオークションで落札され、現在はLaurence Graff氏の下にあります。

以前のブログでも触れましたが、Wittelsbach DaimondとHope Diamondは同じ原石から研磨された兄弟ではないかと言う仮説がありました。
鉱物学的な結論は分かりませんが、もし本当だとしたらなんと言う運命なのでしょう。
広報誌に一緒に並べて撮った写真がありました。
さて、皆さんはどのように思いますか。
(左Hope Diamond、右Wittelsbach-Graff Diamond)

Hope & The Wittelsbach-Graff

Close up Hope & The Wittelsbach-Graff


鑑別が大切

Round Diamonds

ダイヤモンドの処理で厄介なのは「高温高圧処理」です。
見た目には分からないので、高価な機械と高度な鑑別技術を要します。
ブラウン味等の色を薄くする処理なので、鑑別の対象はカラーレスのダイヤモンドです。
カラーレスのダイヤモンドを全て鑑別するのは莫大な費用がかかりますが、幸いなことにこの処理が施されるダイヤモンドは窒素が殆ど入っていないType2と称されるグループでダイヤモンド全体の数パーセントと限られています。
弊社では原石の追跡可能性(traceability)が確保できるもの以外は、自社でType2を選別して全宝協さんに鑑別依頼をしています。
残念なことに今までに数個の「高温高圧処理」が見つかっています。
通常グレーディングレポートを作らない0.3カラット未満も含まれていることが問題を深刻にしています。

先週、既に「高温高圧処理」と分かっているダイヤモンドを別の鑑別会社に依頼しました。
結果は、4Cの記述とType2が判明しただけで処理については不明と出てきました。
このことは、鑑別会社に何が求められているかを明確にしています。
プロならば肉眼で美しさを判断し、ルーペを使って肉眼で見えない要素を確認する作業は出来ますが、処理の有無や原産地の同定は鑑別のプロの領域です。
本来、ダイヤモンドグレーディングの作業は各メーカー、小売店が独自に行うべきです。
取扱量から鑑別会社にアウトソーシング(外注)するのは結構ですが、鑑別会社のグレーディングレポートを作るのではなく、自社の保証書に記載する内容の補助作業として行うべきです。

ダイヤモンドもGem Stoneの一つです。
ルビー、サファイアやエメラルド等と同じく「鑑別」が大切です。
合成ダイヤモンドも今後ますます製造されると想像できるので、今まで以上に「鑑別」の重要性が高まってくるでしょう。
処理されたものや合成ダイヤモンドを販売してしまったら信用は一気に地に落ちます。
分からなかったと言ってもプロである以上、「不作為の罪」に問われても仕方ありません。
鑑別能力を見極めるのもプロの責任です。




刻印の品質

Van Cleef & Arpels

Van Cleef & Arpels、丁寧に彫刻刀で彫られた文字が目に入った瞬間から査定も真剣モードに入ります。
手彫りの刻印はこのブランドの最上位のラインの証です。
知らずと見る方の背筋も伸びます。
幾つかのフランスのブランドは、このように刻印の方法で商品の上下関係を表現しています。

どのような方法でどの位気を使って刻印をしているかで、自ずからジュエリーの品質も決まってきます。
中途半端な品質のものに対して、熟練した職人は彫刻刀で芸術的に一文字ずつ彫る刻印は入れません。
費用もさることながら、その姿勢が刻印に表れます。

金属に彫られた刻印をハンマー等で叩いて入れる方法が一般的ですが、適度な圧力で真っ直ぐにバランスよい間隔を保って押されているかどうかでジュエリーの品質が伺えます。
メーカー刻印のほか、Pt950、K18等の金性、石目方等の数字と順番を決めてバランスよく入れていくのは容易くはありません。

原型に打ったものを仕上げたり、レーザーで入れてあるものはサインを印刷しているようなものでアクセサリーレベルと判断されても仕方ありません。

メーカー刻印のないもの、あったとしても略号で判断できないものは、その真贋すら疑われます。

刻印の有無、方法、丁寧さを見ることは、一般の方でも出来るジュエリーの品質判断の有効な方法です。

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