ジュエリーコンシェルジュ原田信之

諏訪貿易が提供しているジュエリーの相続資産の査定・仲介のサイト「宝石ドットコム」の責任者:原田信之のブログ

2011年02月

刻印調書

刻印調書


ここに大正末期に作られた「刻印調書」という一枚の書類があります。
「刻印」とはジュエリーに打ち込むメーカーや販売店のマークです。
しかし、「調書」とはなんとも厳しい言葉です。

東京の組合がつくったものでジュエリーの製造や小売の屋号、代表者、住所が明記されて一番上に刻印が記されています。
どうやら、登録された「刻印」の一覧表のようです。
現存する会社のルーツも幾つかあります。

よく見ると何やら会則のような文書が付いています。
驚いたことに金と銀の品位の製造者責任を明確にするためにメーカーの打刻を必須として不正をした者には罰則まで設けている内容です。
これを作った人が「調書」とした決意を感じます。
80年以上前に責任の所在を明らかにしようとしたことに感動しました。

残念なことに、この刻印制度は長く続きませんでした。
戦争の足音が聞こえると国の検定制度に移行しなくなってしまいました。

現在もメーカー打刻がないジュエリーが大半を占めています。

ジュエリーは、還流して長く使われます。
還流している間に保証書等の付属品の多くはなくなります。
メーカー打刻が品質の拠り所になります。
今こそ、打刻の重要性を認識することが大切です。


以下に、原文を記します。
当時の漢字は現在のものに置き換えています。


附記
1.金位を表示せる製品に対しては組合刻印を打刻いたします。

2.製品に組合の刻印を打刻する場合は其の責任を明らかにするため表記自家の刻印を併せて打刻することに定めてあります。

3.前項に対して不正の行為をなしたる者には組合は罰則を設けて懲戒することを定めてあります。

以上の如く組合員の製品は各自責任を以って製作せられて居ります。
かつて本組合は貴金属品金性検定制度の設定に就いて全国の同業者と相謀りて政府及帝国議会に請願してその協賛を経ましたが爾来これが実現に就いて全国的に該制度の統一を期することに最大の努力を致して居ります。

組合刻印

金製品打刻
金製品に併用す


銀製品打刻
銀製品に併用す






資料提供:日本宝飾クラフト学院

GIAの戦略

GIA Grading Report

GIAとはGemological Institute of Americaの略です。
米国で宝石学の専門学校と研究所を運営している団体で、ダイヤモンドの品質分析に4Cを開発したことで有名です。
もともと4Cを使ったダイヤモンドグレーディングはGIA独自のものであり、長い間、専門学校の教育を通じて業界にその方法を広め、その甲斐があって4Cがダイヤモンドグレーディングの標準になりました。

GIA方式を勉強した方たちにより世界中にローカルなラボが数え切れないほど開設され、同時にラボ間の競争が激しさを増しました。中には支店を各国に作り規模が大きくなってGIAの存在を脅かすものも現れてきました。
これらのラボでは主にGIA方式のグレーディングを行っていますが、同じものではありません。

GIAは「ダイヤモンドグレーディングレポートは美しさや稀少性を保証するものではないので、結果につきましては専門家にご相談下さい。」という立場をとっています。
費用がけっして安くはありませんので、レポートを作成するものは本来1カラットを越える大粒ダイヤモンドが中心でした。

しかし、ラボ乱立と時を同じくしてインターネットによるダイヤモンド販売が競争に拍車をかけました。
現物を確認できないネット販売ではグレーディングレポートが唯一の拠り所です。
1カラット未満どころかメレーのようなサイズまで販促のためにGIA以外のより廉価なレポートが大量に使われるようになりました。

そのような状況下GIAも方針を転換し、2カラット未満でファンシーカラーでないダイヤモンドに限りプロットを省略したミニ版のレポートを競争的な価格で発行を始めました。

それが、Diamond Dossierです。

同時にラボはカルフォルニアとニューヨークに限定するという方針も変わりました。
主な研磨地や集荷地、又は将来性の高い研磨地にラボを開業して供給能力を高めました。
既に米国の他にMumbai(インド)、Bangkok(タイ国)、Hong Kong(中国)、Gaborone(ボツワナ)、Johannesburg(南アフリカ)にラボを開設しています。
源を押さえているので、数年前まで小粒ダイヤモンドでは珍しかったGIAのレポート(Dossier)がマーケットでの占有率を急速に伸ばしています。
現地のDossier付きのダイヤモンドは、消費地でもそのまま流通し始めています。
今後も世界的にGIAの占有率は伸びることが予想されます。

参考までにGIAの世界の拠点と機能を表にまとめました。
この表を見るとGIAの戦略が良くわかります。
GIA World Wide Service

Laboratory:ラボ(レポート作成)
School:教育(専門学校)
Lab Direct :レポート作成受付代行業者あり
Research:研究拠点
Instruments:鑑別器具

常に4C偏重には異を唱えてきましたが、ここでは論じませんので悪しからず。

インド 加速するダイヤモンド戦略

Bharat Diamond Bourse

2月3日(木)22:00〜23:00 放映の「きょうの世界」NHK BS1に出演しました。
番組の内容は以下の通りです。
世界経済の新興勢力インド。
いまダイヤモンドをめぐるビジネスでも主導権を握るべく積極的な戦略に乗り出している。
目標は、原石の買い付けから研磨、販売まで一貫したビジネスを手がけ、世界のダイヤモンド取り引きの中心地となることだ。
昔からダイヤの研磨業が盛んだった実績をもとに、関連企業が国の支援も受けながら積極的な展開を図っている。
そのシンボルとなる施設がムンバイの巨大なダイヤ取引所だ。
2500もの企業が入居可能という世界最大級の規模を誇る。
世界のダイヤモンド業界の覇権を握ろうとするインドの戦略に迫る。
NHKの現地記者が作成したビデオを見て、コメントしました。
放送では伝え切れなかったことも加えて以下にQ&Aとしてまとめました。

Q:そもそも何故インドでダイヤモンド産業が盛んになったのでしょうか?

A: 1725年にブラジルでダイヤモンドが発見されるまで紀元前からインドが唯一のダイヤモンドの産地でした。
もともとカラーストンを中心に宝石研磨の技術があったこととジュエリーを装う文化がそれを支えたことは確かです。

1970年代に圧倒的な低賃金を武器に、今まで研磨に適さなかった低品質で小粒のダイヤモンド原石を研磨しメレーダイヤモンドに仕上げることで急成長しました。
ジュエリーの大衆化とオーストラリアのアーガイル鉱山による低品質の原石の大量供給が始まったこともあって産業の規模が大きくなり、その後、現地通貨安の常態化が差益を生んで更に資本を蓄えることになりました。

80年代までDe Beersは、インドに研磨産業が一極集中することを避けるため、より大粒な原石を直接販売せずに各研磨地の傘下の業者に配給していました。
しかし、力をつけたインドの業者の優位は変わらず、徐々に他の研磨地の仕事を奪っていきました。

21世紀に入るとダイヤモンド原石におけるDe Beersの独占が崩壊して資源メジャーによる寡占状態に入りました。
原石の入手ルートが多様になり、ますますインド業者の力が強くなってきています。

Q: 覇権を握ろうとするそのもくろみはうまくいくのか?

A: 鉱山会社からの直売以外の原石取引の中心はアントワープです。
一番の買い手であるインドがアントワープのマーケットを通さずに買いたいのは当たり前です。

可能になるかどうかは、これから政府がどのくらい後押ししてくれるかが大きいと思います。
更なるインフラの整備、国際都市として恥ずかしくない環境、アクセス、法整備が必要です。
そして、世界のダイヤモンド業者がこぞって新しい取引所にオフィスを構えるようになったら流れが変わるでしょう。

鉱山会社からの販売は、安定的な売り上げを見込めるサイト販売が柱です。
それに入札制を組み合わせて収益率を上げていきます。

現在のダイヤモンド原石価格は歴史的高値の状況です。
このような値上がり局面では鉱山会社にとっては入札制が有利です。

まず、アントワープで行われている入札がムンバイで行われることから始まるのかもしれません。

とにかくまだ取引所として機能しているとはいえない状況なので、まずムンバイの主な業者の入居が先決です。
入居が完了するのは来年の半ばといわれています。
その後は、以外に早くもくろみ通りになるかもしれません。
Profile
Archives
ギャラリー
  • 見逃したら一生悔やまれる「ギメル展」
  • 見逃したら一生悔やまれる「ギメル展」
  • 見逃したら一生悔やまれる「ギメル展」
  • 見逃したら一生悔やまれる「ギメル展」
  • Van Cleef & Arpels Mastery of an Art残り10日
  • あなた知らないオークションの世界
  • ライブドアブログ