ジュエリーコンシェルジュ原田信之

諏訪貿易が提供しているジュエリーの相続資産の査定・仲介のサイト「宝石ドットコム」の責任者:原田信之のブログ

2011年06月

「何も探していない!」

スタッドピアス+ペンダント

「何かお探しでしょうか?」
何気なくお店に入って販売員さんからこの様な言葉をかけられることは多いと思います。
殆どの人は首を横に振るか「いいえ」のような否定的な返事になります。
そして、見る気を失って売り場を離れる人も少なくないのではないでしょうか。

何故、否定的な答えが返ってくる問いかけをするのか分からない。ある宝石専門店の店主が言いました。
私はお客さんがリラックス出来るように直ぐには声をかけません。
スタッフと打ち合わせをしながら、タイミングを見て話しかけます。
まず興味を持っていただけそうな商品を手にとってもらうことから始めます。
手にとってもらえなければ何も始まりません。

手にとってもただ綺麗だと言ってもらっても殆ど販売にはつながりません。
お客さん自身がその商品の魅力を肯定する会話を心がけます。
場合によっては、そのメーカーのアピールポイントを否定するような投げかけもします。
お客さんがそんなことはないとアピールポイントを肯定されたら、予算以外の買わない理由はなくなります。
もちろん、お店の商品は全て私が自信を持って勧められると言うことが前提です。

この店主は関西人らしく「販売は芸」といいますが、立派な心理学です。
販売の奥深さを改めて知り、やりがいを感じました。
ジュエリーの魅力をより多くの方に広めるには、まず小売の現場です。
ハードの説明に終始しがちですが、気持ちよく購入していただくソフトの充実が求められています。




産地鑑別は意見書

Kashmir Sapphire

宝石に施される処理の有無についての鑑別と並んで、原産地の同定もラボの重要な仕事です。
特に無処理の宝石で特定の産地にはプレミアムがつきます。
ビルマ産のルビー・サファイア、カシミール産のサファイア、コロンビア産のエメラルドが代表格です。
これらの宝石には一般的にはラボのレポートがつけられて取引されます。
国際的に評価が高いのはスイスのGubelinとSSEFですが、最近では米国のGIAも追随しています。
産地鑑別も処理の鑑別と同様にその時における各ラボの独自の判断です。
異なるラボで同じ結果がでることもありますが、違うこともあります。
また、研究が進むと同じラボでも違う結果がでることもあります。
言うなれば、ラボの「意見書」です。
以前Gubelinは、十分に確信がないものにはin our pinionと言う言葉をつけていました。
例)Origin: Kashimir in our opinion
このことは、レポートの性格をよく表しています。
現在はよりデータの蓄積が進んだのか、業界のプレッシャーかは分かりませんが使っていません。
本来絶対はありえないので、in our opinionと言う表現が正しいと思います。
伝統的な産地にはその産地の特色があります。
まず、産地の特徴が良く出ているものを買うことが重要です。
私は、どんなレポートがついていても産地の特色がないものは買いません。
そうすることで将来ラボの鑑別基準が変わっても、鑑別結果が翻るリスクを軽減できるからです。
繰り返しますが、鵜呑みは禁物です。

非加熱は非加熱にあらず

Untreated Burmese Ruby

最近、非加熱のルビー、サファイアと言う表示を目にすることが多くなりました。
これは正確な表現ではありません。
処理と産地鑑別のパイオニアであるスイスのグベリン研究所では以下の表現になります。
No indication of heating
日本語に訳すと「加熱の痕跡なし」になります。
この表現と非加熱は大きく異なります。
「加熱の痕跡なし」とは現在の鑑別技術では加熱した痕が見つからないと言う意味です。
加熱していないという意味ではありません。
山火事や火山活動等の自然界で起こりえる温度の加熱まで区別されることに意味があるとは思えませんが、いつか鑑別技術が向上して現在よりも加熱の程度が細分化されるかもしれません。
弊社では非加熱と言う言葉を使わない代わりに英語のUntreatedにあたる「無処理」と言う言葉を使っています。
カット以外の人為的な処理が施されていないと言う意味で用いています。
また、直訳の「加熱の痕跡なし」は長すぎて使い辛いと言う現実的な理由もあります。
私が宝石を買うときは、どんなレポートがついていても自分の目で見て納得がいかないものは買いません。
無処理の宝石を買う場合は透明度の高さや色の優しさ等の特徴を備えているものだけに限ります。
レポートには無処理でも、目で見て処理されたものと差が分からないものにプレミアムを払うのはプロではありません。
何事も鵜呑みは禁物です。

Christie's Hong Kong Auction Result 6

まだまだご紹介したいロットはありますが、今回でChristie's Hong Kongは最終とします。
最後は、最近登場回数が増えているスピネルと記録的な高値で落札された天然真珠のネックレスをご紹介します。


○Spinel
3095 Burmese Spinel 74.35cts.JPG

Spinel: 74.35cts Octagon-shaped
Origin: Burma  Gubelin
Estimate: HK$3,600,000 - HK$5,200,000
落札価格(手数料込み):HK$4,100,000 $529,487(約4,300万円)
1カラット当たり価格:約$7,000(約59万円)
この品質としては非常に大きいビルマ産のスピネルです。
ジュエリーではなくルースで出品されました。
スピネルは伝統があり硬度も十分な(硬度8)宝石ですが、産出が限られているためコレクターアイテムになっています。
純色の赤が好まれますが、産出は極稀です。
この78,35カラットのスピネルは若干ブラウン味はありますが、サイズ、透明度ともに珍しいため高額の落札となりました。
スピネルは宝石店のオーナーのコレクションとして人気があります。


○Natural Pearl Diamond Necklace


Natural Pearl Three-strand Necklace

Pearl: Beads 143pc
Pearl: Drop-shaped 1pc
Estimate: HK$9,600,000 - HK$15,000,000
落札価格(手数料込み):HK$19,140,000 $2,471,801(約2億円)
直径約2.5〜12.8 mmの天然真珠の143個を三連に連ねた豪華なネックレスです。
トップの長さ2センチを越えるドロップシェイプも天然真珠です。
多数の買い手が競り、見積価格の上限を超えて落札されました。
大粒のダイヤモンドのような素材単独ではなく、これだけの数が全て天然真珠であると言う装身具に関するプレミアムです。
トップのドロップシェイプにはSSEFのレポートが付いています。
143個の連に関してはジュネーブのGemmological Technology Laboratoryが全て天然としているのに対して Gubelin Gemmological Laboratoryはその内85個を天然としているのが天然真珠の鑑別の難しさを表しています。
繰り返しますが産地、処理に加えて天然、養殖のレポートもあくまでも各ラボの意見書です。
しかし意見書とは言え、その時代で権威あるラボのレポートを元に売買が行われているのも事実です。



Christie's Hong Kong Auction Result以上。




Christie's Hong Kong Auction Result 5

今回は、ファンシーシェイプのダイヤモンドジュエリー2点を紹介します。

○Dimaond Ear Pendants
13.03+12.86cts HS D IF Typea

Diamond:13.03+12.86cts Heart-shaped Brilliant-cut
D Internally Flawless Typea GIA
Estimate: HK$23,500,000 - HK$35,000,000
落札価格(手数料込み): HK$26,420,000 $3,411,963(約2億8,000万円)
1カラット当たり価格:約$130,000(約1,000万円)
落札者:アジアの業者

ハートシェイプ好きにはたまらないフックタイプのピアスです。
ローズゴールドにメレーダイヤをセットし、取り巻いてハートの形を強調しています。
ふっくらとした輪郭が中華系の方にも人気です。
国際オークションでもこのサイズでこの品質が揃うことは稀です。
耳元で揺れる大きなハートの輝きは、きっと注目を集めるでしょう。


○Diamond Necklace
PS 26-67.63cts(0.71-7.58) D IF

PS 26-67.63cts(0.71-7.58) D IF Close up

Diamond: 26pc 67.63cts Pear-shaped Brilliant-cut
D Internally Flawless
Estimate:HK$23,500,000 - HK$35,000,000
落札価格(手数料込み): HK$27,540,000 $3,556,604(約2億9,500万円)

0.71から7.58カラットのペアーシェイプ26個をグラデーションさせて斜めに配置したネックレスです。
26個のペアーシェイプは全てDカラー、Internally Flawlessです。
水滴が落ちるような向きで配置するのが一般的ですが、斜めに配して約40センチの長さのラインネックレスに仕立てています。
ピンクダイヤモンドを加えることで可愛らしくなっています。


続く。




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