何と魅力的なアメシストのリングでしょうか。
このリングはあるジュエリーのプロの方の依頼で作りました。
残念なことに現在市場には魅力あるアメシストのリングは殆どありません。
2月生まれの人はどれほど恨めしく思ったことでしょう。
実はこのリングのオリジナルはエメラルドのリングでした。
見たことがないぐらい美しい無処理のエメラルドが中心にセットされていました。
ある日、誤ってリングをぶつけた時にエメラルドの端が僅かにチップしてしまったそうです。
大変気に入っていたエメラルドなので再度このようなことが起きて致命的にならないようにエメラルドは後日ペンダントに加工することにしました。
そこでエメラルドの代わりに何か他の宝石を入れてリングを使うことになり、幾つかの候補の中から選ばれたのがこのアメシストでした。
出来上がったリングを見て余りの美しさに感動しました。
実はこれほどのダイヤモンドのリングにはルビーかサファイアが相応しいのではと思っていましたが、その方は迷わずアメシストを選ばれました。
さすがです。
アメシストは、ヨーロッパでは2万5000年前の遺跡から装身具が発見されるほど最も古くから人類が関わってきた宝石です。
古代ギリシャ・ローマ時代には貴重な宝石として重んじられ、後にロシアやブラジルで多くが産出され高品質でありながら入手しやすい宝石として今に至っています。
アメシストの装身具で魅力的なものが少ないのは我々作り手の意識レベルが低いことが原因です。
修理品が作り手の目を覚まさせてくれました。
参考資料:「宝石1」世界文化社刊