850

850と言う数字を見てピンと来る人はいないと思います。
車のシリーズでも新しいニュース番組でもありません。

宝石の重量の単位であるカラットの小数点以下3桁から5桁の数字です。

宝石業界で使われているデジタル秤は小数点以下3桁が一般的です。
3桁でも1,000分の1カラットまで量ることが出来ます。
1カラットが0.2グラムなので、0.0002グラムまで計量可能と言うことです。
5桁になると0.000002グラムと言う微小な単位です。
まるで科学の実験の世界です。

殆ど目にすることのない小数点以下5桁の石目方はGIAのラボで特別な秤によって計量されます。
300キロの大理石の台の上に秤を置いて安定させ、常に同じ値が出るようにしています。
但しGIAのDiamond Grading Reportの石目方表示は小数点以下2桁です。
ジュエリーに打刻する場合も国際的には2桁表示が標準です。
では3桁目以降は何のために必要でしょうか。
実は切り上げ切捨てのために計量されます。
その分かれ目が小数点以下3桁以降の850(0.00850)です。

具体的に説明します。
0.00850〜0.00999の場合は小数点以下2桁が切り上がってて0.01になります。
と言うことは0.99850の場合は1.00表示になってしまいます。
0.99849でしたら0.99のままですが、0.00001の差でインパクトが大きく変わります。
GIAのレポートでそのまま流通すれば問題ありませんが、ローカルなレポートを取り直すと問題が起きる場合があります。
例えば日本国内では小数点以下3桁目は切り捨てが一般的なので0.99999でも0.99カラットと表示されます。
問題は価格です。
ダイヤモンドのように稀少性の高い宝石は重量の範囲によって1カラット当たりの単価が大きく変わることがあります。
0.99カラットと1.00カラットや1.99カラットと2.00カラット、2.99カラットと3.00カラットのように大きくなるとその差が歴然と開くことがあります。
もともと他のレポートに取り直す必要はありませんが、石目方が切り上がっている場合があることを認識する必要があります。
レポートを紛失し量りなおしたら違っていて大騒ぎ、と言うようなことがないようにしたいものです。

GIAがどんな理由で境目を850にしたのかは不明ですが、現在のように秤の精度が高くなかった頃は小数点以下3桁を8捨9入としていました。
5桁の精度になったことで新たな決まりが作られたのかもしれません。
切り上げると言う行為にアメリカ人の大らかさを感じるのは私だけでしょうか。