ジュエリーコンシェルジュ原田信之

諏訪貿易が提供しているジュエリーの相続資産の査定・仲介のサイト「宝石ドットコム」の責任者:原田信之のブログ

2013年11月

Exceptional Ruby

昨日Christie's Hong Kongのジュエリーオークションが行われました。
落札総額HK$859,087,250 US$110,822,255(約111億円)、落札率86%(ロット数)と言う好結果となりました。
10年前は百万ドル以上は高額落札になりましたが、今回は百万ドル以上が26ロットもあり、3百万ドル以上でなければベスト10にも入りません。
因みに百万ドル以上の総額は77百万ドルで全体の70%を占めます。
全体のロット数が309ロットなので僅か8%の数の商品が全体の7割を売り上げています。
ジュエリービジネスの常ですが、高額品が売れなければ商売になりません。
また、高額落札が伸び続けているのは貧富の格差が拡大していることに加えて、先進国の金融緩和であふれた資金が現物資産に向かわせているのも否定できません。
これもまた宝石の持っている魅力の一つです。

今回は落札された中で気になったものを一つだけ紹介します。

○Ruby Diamond Ring
13.21ct Burma Mogok Ruby UT

Ruby
Shape:Oval-shaped
Cut: Mixed-cut
Weight: 13.21ct
Size: 13.79X11.79X8.50
Origin: Burma Mogok(ミヤンマーモゴック鉱山)
Treatment: No indications of heating(加熱の痕跡認めず)
見積価格:HK$38,000,000-58,000,000
落札価格(手数料込み):HK$46,040,000 US$5,966,784(約6億円)
1カラット当たり価格:US$451,000(約4,600万円)

このサイズでこれだけ透明度の高いルビーは非常に稀です。
古くはスリランカ産、最近ではタンザニア産のルビーでは見ることがありますが、ビルマ産でしかもモゴック鉱山のものに出会うことはプロとしても多くはありません。
いわゆるピジョンブラッドと言われる濃い赤のものではありませんが、透明度も宝石の重要な要素です。
しかし、透明度が高ければ高いほど良いかと言うとそうでもありません。
合成ルビーのように混じりけの無い高い透明度は魅力がありません。
宝石は不完全なところが魅力であり難しいところです。
このルビーも高い透明度に優しさも感じます。
色味も赤に紫味(ピンク味)を感じるところにモゴックの特徴が現れています。
全体のプロポーションも深さが72%と決して浅くはありませんが、このボディカラーを引き出すのには必要で許容できます。
13.21ct Burma Mogok Ruby side view

SSEF, Gubelin, AGLと3つのラボのレポートを添付する念の入れようです。
しかも、SSEFとAGLはモゴック鉱山の特徴を備えているとのAppendix(追加説明)も提出してます。
13.21ct Burma Mogok Ruby SSEF Report

AMS

AMS

パソコンとプリンターのように見えますが、黒い箱状のものはAMSと言う機械です。
AMSとは、Automated Melee Screening instrumentの略で直訳すると「自動メレーふるい分け機」です。
合成メレーダイヤモンドの混入の報告が続いていますが、De Beers(DTC)は早くから問題点に気づき昨年には合成メレーダイヤモンドを振り分ける機械の試作を完成させていました。
今秋にその精度が確認されて、ついに来春からサイトホルダー向けに出荷が始まります。
De Beersによれば合成の殆どを振り分けるとされています。
実際に見て結果を確認したわけではありませんが、De Beers側の発表した内容を以下に記します。
トレーサビリティーが確立していれば、このような機械は不要ですが、現実として不確かなメレーを振り分ける必要性はあります。
この機械の精度が高ければ朗報です。

Automated Melee Screening (AMS) instrument
by International Institute of Diamond Grading & Research
Part of the De Beers group of companies

・機械の大きさは横26cm×高さ23cm×奥行き42cm
・選別できるダイヤモンドは無色からほぼ無色(D-F〜G-J)、0.01ct(約直径1.4mm)〜0.20ct(但し天然を処理したものは不可)
・全自動で一度に500カラットまで投入可能、
・平均で1時間に360個のダイヤモンドを選別
・パソコンと専用ソフトが必要
・費用は3年リースでUS$75,000(約750万円)1年当たりUS$25,000(約250万円)
・デリバリーは2014年3月を予定。(当初はサイトホルダーのみ)



Pink Dream 59.60cts Fancy Vivid Pink IF

Pink Dream 59.60cts Fancy Vivid Pink Internally Flawless Typea

昨日Sotheby's Geneveで宝石のオークション史上最高金額樹立。
Shape: Oval
Weight: 59.60ct
Color: Fancy vivid Pink
Clarity: Internally Flawless
Type: Typea
落札価格(手数料込み):CHF76,325,000 $83,187,381(約83億円)
1カラット当たり価格: $1,395,761 (約1億4,000万円)

5分に及ぶビットは最終的に4人によって競われ、ニューヨークのカッターIsaac Wolf氏が落札。
4人の内2人はアジア人との事。
アジアンマネー未だ存在感。
Wolf氏は早速Pink Dreamと命名。
オークションの落札総額も$199,512,930(約199億5,000万円)とジュエリーオークション史上最高額を記録。
Sotheby's提供の動画


<来歴>

The Steinmetz Pink→The Pink Star→Pink Dream

そのピンクダイヤモンドの原石(132.50ct)は1999年にデビアスよって発見され、イスラエルのダイヤモンド業者Beny Steinmetz氏が購入し2年の歳月をかけて研磨。
Helena Christensen with The Steinmetz Pink
2003年にモナコで The Steinmetz Pinkとしてスーパーモデルのヘレナ・クリステンセンが身につけデビューし話題。
2003年Steinmetz Diamondの提供によりスミソニアン博物館で行われた"Splendor of Diamonds"に展示。
2007年に匿名の個人に売却され今回のオークションにThe Pink Starとして出品。


The Orange

14.82ct Fancy Vivid Orange VS1

昨日Christie's Genevaでジュエリーオークションが行われました。
落札総額(手数料込み):SFr. 115,146,625 US$125,360,131(約125億円)
落札率:89%(ロット数)
落札総額、落札率共に素晴らしい結果でジュネーブの底力を見せつけられました。

その中で最も注目されていたのは14.82カラットのFancy Vivid Orangのダイヤモンドです。
結果は見積金額の下限の倍の金額で落札され、オークションにおけるオレンジダイヤモンドの1カラット当たりの記録となるホットなものでした。
黄色系で1カラット当たりが200万ドルを超えるとは正直驚きました。
オレンジが美しいと言うよりGIAのFancy Vivid Orangeと言うグレードについた価格で、Fancy Vivid Yellowish OrangeでもFancy Vivid Yellow-Orangeでも実現しなかったと思います。

○Diamond
Shape: Pear-shaped
Cut: Brilliant-cut
Weight:14.82cts
Size: 21.40x133.77x7.66
Color: Fancy Vivid Orange
Clarity: VS1
Fluorescence: Strong Yellow
Type: Typea
見積価格:$17,000,000-20,000,000
落札価格(手数料込み):$35,540,612(約35億円)
1カラット当たり:$2,400,000(約2億4,000万円)
落札者:匿名

これだけの濃さのダイヤモンドでトータルデプスが55.7%と言うのはボディカラーが本当に濃い証です。
14.82ct Fancy Vivid Orange VS1 side view


蛍光がVery Strong Yellowと言うのも稀です。
この蛍光がカラーに影響しているのでしょう。

GIAのTypeレポート
14.82ct Fancy Vivid Orange VS1 GIA Type Report.


GIAの付記
どのくらい稀少であるかが記されています。
この手に色は3〜4カラットでも非常に稀少であるにも関わらず、その4倍の大きさである・・・。
14.82ct Fancy Vivid Orange VS1 GIA Apendex

ラパポートのファンシーシェイププライスリスト

ラパポート ファンシーシェイププライスリストの変遷

ダイヤモンドの価格指標として有名なラパポートレポートはラウンド版とペアーシェイプ版に分かれている。
このリストはタイトルにAPROXIMATE HIGH CASH ASKING PRICE INDICATIOSとあるように「大よその掛け値」である。
掛け値であるので実際の相場はこの価格より幾分安く取引される。
その割引幅は個別の品質や需給によって異なる。
バイヤーはペアーシェイプのリストを使って全てのファンシーシェイプの価格を計算する。
歩留まりからプリンセスカット、エメラルドカットはブリリアント系より1〜2割低いのが基本だ。

ラパポートもファンシーシェイプのリストでは苦労している。
各シェイプに対応して過去に2度大きく改定した。
1996年7月にマーキスとエメラルドカットを追加した。
そして2004年の5月にはプリンセスカットの需要の高まりからエメラルドカットを廃止してプリンセスカットのリストに差し替えた。
しかし、バイヤーはどの新しいリストも使わずにペアーシェイプのリストだけを使い続けた。
結果、2007年3月にはペアーシェイプのリストだけに戻った。
理論が実践で通らなかった瞬間だ。

ファンシーシェイプは一つ一つが異なるので価格形成には複雑な要素が絡みあう。
買い手も売り手も思い込みが強いのがファンシーシェイプでそこが宝石本来の醍醐味だ。
そのファンシーのリストの割引幅に変化が生じている。
カット良いもの(姿形のよいもの)の中に割引の無いものや逆にリスト以上で取引されるものも出てきた。
反対にカットの悪いものは何割下げても売れない。
カットの悪いものは納得できるが良いものがそれほど値上がったのだろうか。
歩留まりの違いから長い間ペアーシェイプのリストは平均してラウンドの2割安程度で作られていた。
リーマンショックでダイヤモンド相場は一度下がったが程なく相場は回復した。
特に大粒は下落した以上に値上がりした。その過程でラパポートはペアーシェイプのリストをラウンドほど上げなかった。
結果、2割ほどあったラウンドとの差が3割程度になったこととカットの良いファンシーシェイプの需要の高まりで割引幅に変化が起きた。
ラパポートがペアーシェイプのリストを大幅に上げない限りこの傾向は続くであろう。
ファンシーシェイプの扱いの少ない業者は相場の踏み違いに注意が必要だ。

原田信之

No.09 リ・ジュエリービジネス・レポート(2013年11月1日発行)より
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