ジュエリーコンシェルジュ原田信之

諏訪貿易が提供しているジュエリーの相続資産の査定・仲介のサイト「宝石ドットコム」の責任者:原田信之のブログ

2014年09月

香港ショー

ホンコンショー

 バーゼル、ラスベガスと並び世界3大ショーと称される香港ショーが9月15日(月)から9月21日(日)まで開催されました。
アジアの発展で今では3月、6月、9月と年3回開催されるようになりましたが、やはり年末年始に向かって仕入れが活発になる9月のショーがメインです。

 今回は中国景気のスローダウンがどこまで影響するかが注目されていました。
昨年に比較しても来場者の数は落ちていないようですが、やはり中国人バイヤーの買いは当面の在庫補充が中心で景気の不透明感から見込み在庫は控えているのが実態です。
ダイヤモンド業界にとって一番の障害であったGIAでの商品の滞留が最悪期を越えて会場にはサイズを問わず需要の高いGHIJカラー、VS-SIクラスの商品も前回以上に並んでいました。

 中国の需要減で深刻なのは一般の消費者が購入するアイテムではなく、現政府が推し進める前代未聞の汚職の摘発で注目されている高額商品です。
著しく売り上げが落ち込んだのは高級時計で半減しているブランドも出ているほどの状態です。
摘発を逃れようとして北京や上海で質店にブランド品を持ち込む人が絶えないようです。
高級時計ほどではありませんが高額のジュエリーも状況に変わりはありません。
過度に中国に売り上げを頼っていた会社は今後レイオフも視野に入れざるを得ないのではと心配です。

 そのような状況で多くのバイヤーが無処理のカラーストン(プレシャスストン)を探していました。
ダイヤモンドの仕入れ予算がないブランドのバイヤーもカラーストンは別です。
特に数が少ないのがモゴック産無処理のルビーです。
無処理のルビーを尋ねると殆どの業者がまずモザンビーク産を持ってきます。
あったとしても何か欠点があるか法外な価格のいずれかです。
特に2カラット以上はとても手に負えません。

 無処理のエメラルドも稀少ですが、現実的なラボの鑑別のお陰で以前より多く見るようになりました。
しかし10カラットを超えるコロンビア産のものは少なくバイヤーはやむなくザンビア産を購入し始めました。
メレーサイズの高品質エメラルドはパキスタンのスワットの産出が復活して既に市場から消えたジンバブエ サンダワナ鉱山産の後継となっています。


禁断の処理

天然モルガナイト原石

代表的な宝石の処理はルビー、サファイアに代表される高温加熱処理とエメラルドに顕著な含侵処理などがありますが、鑑別技術の進歩で有無と程度を判断できるものが多くなりました。
反対に自然界にも存在するために人工的に施されたか分からないのが放射線照射処理です。
中性子線や電子線の照射後に加熱処理して結晶構造に歪みを与えると特定の色が吸収され、結果吸収されなかった色が見えてきます。
代表的な宝石はブルートパーズ、ピンクトルマリン、最近ではモルガナイトも加わりました。
ダイヤモンドでも照射によって殆どのファンシーカラーが作られますが、グリーン系以外の色は天然か照射によるものか判断可能です。
問題はやはりカラーストンを処理したものです。
ひとたび照射処理のものが出回ると天然で同じような色があったとしても見分けがつかないので価格は照射処理の価格に収斂します。
「悪貨が良貨を駆逐する」のグレシャムの法則の通りになります。
原子力発電所の事故以来、人類が手に入れてしまった放射線と向き合う日々が続いていますが、宝石の放射線照射処理も罪深い「禁断の処理」といえるものです。

上の画像は天然のモルガナイトの原石です。
モルガナイトはピンク色のベリルです。
ベリルの仲間には鉄が加わることでブルーになるアクアマリン、クロムやバナジウム等が加わることでグリーンになるエメラルドが知られています。
モルガナイトは画像のようにインクルージョンが多いため従来は研磨石として出回ることが少ない宝石でした。
しかし、ここ数年良く整った色味のモルガナイトの裸石が大量に出回りました。
宝石の世界では急に同じような色が大量に現れたらまず処理を疑います。
案の定、やはりこれは照射処理によるものでした。

照射処理は大量に産出される無色のベリルの原石を研磨して行います。
処理する費用が重量がベースになるため原石段階では行いません。
研磨済み又はプリフォーミング(ファセットをつける前の段階)で処理します。
無色ベリル原石
無色天然トパーズ原石

照射処理モルガナイトプリフォーミング
プリフォーミング照射処理モルガナイト

照射処理モルガナイト
研磨済み照射処理モルガナイト


同様にブルートパーズもご覧ください。
無色トパーズ原石
無色天然トパーズ原石
無色トパーズ プリフォーミング
プリフォーミング無色天然トパーズ
研磨済み照射ブルートパーズ
研磨済み照射処理ブルートパーズ
左の濃いものは中性子線照射、右2個は電子線照射

ブルートパーズ天然と処理比較アクアマリン付
天然のブルートパーズと照射処理ブルートパーズとアクアマリンを比較しました。
天然のブルートパーズはごく淡く一目で照射のものと区別がつきますが、鑑別は出来ません。
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