ダイヤモンドのクラリティーでFlawless(フローレス)やInternally Flawless(インターナリー・フローレス)と言う等級があります。
両者の違いは、簡単に言うと10倍の拡大でInternally Flawlessが内部のキズが見えないのに対して、Flawlessは外部のキズも見えないというものです。
これらは一般的に「無傷」とも言われています。

私は、在庫としてはどちらも仕入れません。
リカット(再研磨)をした結果、不意になってしまったものは別にして、元からFlawlessやInternally Flawlessのダイヤモンドは仕入れません。

美しさはカラー・クラリティーに拘わらず、実際に見なければ分かりませんのでその理由ではありません。
問題は価格のプレミアムにあります。
VVS1とInternally Flawlessの価格差は平均すると約1割程度ですが、Dカラーにおいては、その差は3割から4割に達しています。
この弊害で研磨業者はDカラーのFlawlessやInternally Flawlessでなければ儲からないので、可能性があれば、多少小さくなっても必死に挑戦します。

GIAの元学長の故リディコート氏は、FlawlessやInternally Flawlessのダイヤモンドは1週間身に着けるとVVSになると言っていました。
ダイヤモンドは、世の中で一番硬いと言われていますが、リング等に仕立てて身に着けていれば、ぶつかったりして若干のキズがつきます。
私は、オークションや相続の査定で様々なダイヤモンドと日々向き合っています。
実際に多くのFlawlessやInternally FlawlessのダイヤモンドがVVSやVSクラスになっているのを目の当たりにします。
もちろん、これらのキズは、殆ど場合美しさに影響はありません。
また、多くは簡単な再研磨で元のFlawlessやInternally Flawlessに戻りますが、現実的でありません。
どうしてもFlawlessやInternally Flawlessを保つには、身に着けずにコレクションとして楽しむのが賢明です。
装身具としては、無用なプレミアムと言うわけです。

多くの専門家は、この事実を知っているので、親兄弟、身内には勧めません。
更に自腹の場合はVSクラスかSI1を目指します。
なぜなら、こららのクラスで欠点のない美しいものはFlawless〜VVSクラスに比べて大幅に割安だからです。

本来、ダイヤモンド以外の宝石における品質の分類はもっと大雑把です。
VSクラスから上は同じランクに入っていて殆どプレミアムはつきません。
ダイヤモンドだけが、細分化されすぎているのです。
むしろ、ルビーやサファイアでは、欠点にならない内包物は天然の証で、形状によっては高温の加熱処理が施されていない手がかりにもなる貴重なものです。

何れ世界が気がついて、FlawlessやInternally Flawlessが納得できるプレミアムに収束する日が来ると信じています。