宝石に施される処理の有無についての鑑別と並んで、原産地の同定もラボの重要な仕事です。
特に無処理の宝石で特定の産地にはプレミアムがつきます。
ビルマ産のルビー・サファイア、カシミール産のサファイア、コロンビア産のエメラルドが代表格です。
これらの宝石には一般的にはラボのレポートがつけられて取引されます。
国際的に評価が高いのはスイスのGubelinとSSEFですが、最近では米国のGIAも追随しています。
産地鑑別も処理の鑑別と同様にその時における各ラボの独自の判断です。
異なるラボで同じ結果がでることもありますが、違うこともあります。
また、研究が進むと同じラボでも違う結果がでることもあります。
言うなれば、ラボの「意見書」です。
以前Gubelinは、十分に確信がないものにはin our pinionと言う言葉をつけていました。
例)Origin: Kashimir in our opinionこのことは、レポートの性格をよく表しています。
現在はよりデータの蓄積が進んだのか、業界のプレッシャーかは分かりませんが使っていません。
本来絶対はありえないので、in our opinionと言う表現が正しいと思います。
伝統的な産地にはその産地の特色があります。
まず、産地の特徴が良く出ているものを買うことが重要です。
私は、どんなレポートがついていても産地の特色がないものは買いません。
そうすることで将来ラボの鑑別基準が変わっても、鑑別結果が翻るリスクを軽減できるからです。
繰り返しますが、鵜呑みは禁物です。
「現在の鑑別技術とデータの集積から、そう推定される‥」ということで、
処理の有無や原産地を保証するものでもなければ、
ましてや、その宝石の美しさや価値の優劣を判断するものでもありませんものね。
採掘から研磨まで一気通貫(?)トレースできる人でないと、
処理の有無や原産地の保証はできないと思います。
鉱山主の原石といっても、原石の時点で低温加熱して備蓄していることもありますし
採掘現場では、よそから持ち込んだ原石を埋めるなどの巧詐をすることもあると聞きます。
そうならば
保証がないことを前提にして、
宝石を扱うプロのかたはもちろんのこと、私ども消費者も、
自身の経験と本来持つ審美眼で、判断するしかないということですね。