− 5月25日日経新聞朝刊マーケット商品欄記事−

円安、中国需要も旺盛 一部の宝飾品で値上げ

 ダイヤモンドの卸価格が上昇している。円安に加え、日本で人気のあるサイズの需要が中国で拡大し、海外での取引価格も上昇しているためだ。卸会社は2月にも値上げを実施したが、海外からの仕入れコストが一段と押し上げられており、追加の値上げに踏み切った。一部の小売店は宝飾品を値上げしたが、価格を据え置く小売店は収益が圧迫されそうだ。

2013年5月25日日経 ダイヤモンドの国内卸価格

 大手のダイヤ卸業者は4月以降、宝飾品店に対し婚約指輪などに使う比較的小粒の製品を値上げし始めた。0.3カラット(カラットは0.2グラム)サイズの卸価格は11%上がり、20万円前後(1カラット換算、無色透明タイプ)。2月と合わせた上げ幅は約2割に達した。大型の宝飾品に使い、資産価値が目減りしにくい2カラットサイズも今月に入り98万円前後(同)と平均3%上昇した。

 2月に続き値上げに踏み切ったのは、輸入業者の仕入れコストが上昇したためだ。2月以降も円安が進み、卸業者は「早くも収益が圧迫されるようになった」という。

 国内で流通量の多い0.3カラット前後の小粒品は海外での流通価格も年初から1〜2%上がっている。中国では日本と同様に消費者が婚礼用に購入する習慣が普及しつつあり、需要は旺盛だ。最近では「大量に購入する中国の業者に買い負ける」(宝飾品大手)例も出ている。

 ただ、世界で流通量が多い2カラットサイズの需要は「欧州などの景気回復の遅れから伸び悩んでいる」(諏訪貿易の原田信之取締役)。

ダイヤモンドの流通

 需要が振るわないなかで海外では新たな値上げの動きが出ている。ダイヤ卸会社によると、鉱山会社の最大手で英アングロアメリカン傘下のデ・ビアスは4月から各国の研磨業者への原石の出荷価格を3%前後引き上げた。鉱脈が地中深くなるなど生産コストの上昇が理由だ。

 現時点では「海外の研磨業者がコストを吸収し、製品価格には波及していない」(ダイヤ卸)が、中長期的には値上げの要因になり得る。

 国内では宝飾品の値上げの動きも出てきた。米宝飾大手や一部百貨店は貴金属の値上がり分も含め、4月に国内販売価格を1割前後引き上げた。

 大半の販売店はダイヤをより小粒なものに切り替えるなどして現時点では売値を据え置いている。ただ「足元は利益を確保できるぎりぎりの線」(宝飾店)という小売店が多く、今後は値上げの動きが広がる可能性もある。

 国内では今年に入り、富裕層の高額消費が徐々に動き出している。「4月以降に500万円以上の宝飾品の売買が成立した」(宝飾品の製造会社)。ただ、宝飾品市場全体ではダイヤを使う婚約指輪にかける費用は下がる傾向が続いている。