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「不純物を楽しむ」

 私にはシステム手帳に大事に挟み時折読み返している2つの新聞記事があります。
 一つはあるクラッシック愛好家の記事で、便利なCDからアナログのLPレコードに戻った経緯が書かれたもの。傷つかずサイズも小さくて扱いやすいと言うことでCDに切り替えたものの、CDの音は硬く、深みがなかった。なぜかというと、人間が聞こえない音を削り取っていった結果、音がクリアになりすぎて人工的に聞こえてしまうからだと指摘しています。「お酒からアルコールを取り出して、それに水を加えても元のお酒のコクがなくなって美味しくない。そのコクは不純物から来る。生演奏がすばらしいのも雑音を含め不純物がいっぱいあるからです。」と記事では解説しています。
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 もう一つはフルート製作の職人さんがフルートの名器を復活するエピソードです。試行錯誤を続けて技術的には遜色ない物ができあがりましたが、独特な豊かな響きがどうしても出ないで悩んでいました。あるとき素材の違いに原因があるのではと思い、純度の高い銀に代え当時の銀食器を溶かした銀を用いて作ったところ目指していた音が出たということです。昔の銀には不純物が多く含まれており、その不純物が豊かな音色を引き出していたのです。
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 もうお気づきかと思いますが二つの記事の共通点は「不純物」。「不純物」が本物の味わいを導き出しています。例えば最近の商業ビルと古くからの商店街にある飲食店の違いにも近い物があります。新しい商業ビルのお店はどれも綺麗で洗練されていますが、どのビルのお店も似たような感じで人工的です。それに対し古くからの商店街のお店は様々で、店のたたずまい・店主・客・料理等々が良くも悪くもその店固有の特徴となり、そういう店が集まって街全体が生き生きとし、人はそこに引き付けられます。
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 大自然の創造物である宝石も一つとして完全なものはなく、不完全です。結晶時にまわりの環境を取り込んで唯一無二の特徴が出ます。一般的にインクルージョンと呼ばれるものもその一つです。もちろん過ぎたるは欠点になりますが、このインクルージョンがあることで魅力的な宝石が生まれるのも事実です。カシミールサファイアの微細なインクルージョンはコーンフラワーブルーと呼ばれる独特な乳白色のブルーになります。ビルマ(ミャンマー)産やスリランカ産サファアイの無処理のルビーやサファイアに特徴的なシルクインクルージョンは適度な量ならば透明度が高いのに優しさも併せ持つと言う一見矛盾した特徴を生みます。一方、宝石の世界において前述の記事のCDの音質や純粋な銀にあたるのが合成石です。合成石の純粋な結晶からは自然な優しさは感じられません。
宝石をお持ちの方は、あらためて手に取りじっくりながめて一つ一つが異なる美しさを楽しんでみてください。
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画像提供:Tokyo Gem Science
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