オークション下見会会場small

 どうしたら宝石やジュエリーの善し悪しや相場が分かるようになるのだろうか。宝石店を回ってもショーケース越しに覗くのは勇気がいる。気になったものを試しに出してもらって手に取ったらいつの間にか買う羽目になっていた経験をした人にはトラウマだ。では講座を受ける?学校に入る?何れにしてもかなりの費用がかかる。
 費用が殆どかからない絶好の場所がある。それは宝石オークションの下見会だ。ネットオークションと異なりライブのオークションはオークション2、3日前に手に取ってジュエリーを見ることができる下見会が開催される。下見会には原則として誰でも入場することが出来る。下見会の良いところは販売の為ではなく純粋に下見なのでジュエリーを気軽にチェックすることが出来る点だ。それに一般の宝石店ではそれぞれのお店の格で品質は揃っているので比較は難しいが、オークションの下見会は品質が様々で、善し悪しの比較ができるのが特徴だ。
 下見会に参加するには、オークション会社に電話するかホームページから申し込んでカタログを入手することが第一歩。下見会の場所、日時を確認して、それまでにカタログをチェックする。お目当てのジュエリーを落札したい場合はそれだけをチェックすれば良いが、ジュエリーをより深く理解したい場合は全てのロットの写真と記載されているデータを丹念にチェックして出来るだけ多くの商品を下見会で手に取って確認したい。
 ここで大切なのは何でも良いから本気で買うことだ。金額は問わないが購入する目的を持つことで力がつく。例え欲しいものが無くても「掘り出し物」を探すだけでもいい。オークションの良いところは落札して手に入れた物も相場が変わらなければ原則として同じリザーブ価格(最低落札価格)で再度出品できることである。もし手に入れた同額で落札されれば手数料分はなくなるが勉強代としては安い物だ。一般の方でもオークションで手に入れて飽きたら再出品し、他のものを手に入れることを繰り返している上級者もいる。一定額をジュエリー購入に充てると考えれば、今はやりのサブスクリプション的な使い方だ。
 ここからは下見会に欠かせない七つ道具を紹介しよう。10倍のルーペ、ペンライト、紫外線ライト(ブラックライト)、ピンセット(ルース用)、ノギス(無ければ定規)、宝石用クロス(めがね拭きでもOK)、計算機。これらを宝石店に持ち込むことは失礼で出来ないが、下見会では問題ない。下見会は一般的に一日中行っていているので、時間を取ってじっくり見たい。

オークション下見会ディスプレイsmall

 まず、ショーケース越しに見てカタログの画像と比較する。オークションカタログの画像は実際の色や寸法に近くするのが基本だが最近は実物より良く見せる傾向があるので確認が必要だ。下見会場によるが自然光で見ることができるスペースが用意されているところは是非活用したい。特にスペースを設けていない会場でも気になるロットは係に窓辺でチェックしたい旨を伝えて見ることも可能だ。宝石は光源によって見え方が変わるので自然光、蛍光灯、白熱灯、LEDとで微妙に異なる。
 次に手に取って重量を確認する。重さから耐久性や装着性をチェックする。例えばブローチの重い物は要注意だ。日本は温暖化で服装が薄くなっているので重すぎるものは使えないことが多い。
 この後はルーペを使うので、事前に使い方をマスターしておこう。レンズを親指と人差し指で挟んで、ルーペのレンズにかかるかかからないかぐらいのところを中指で支える。ジュエリーを中指につけて覗くとピントが合う。10倍のルーペでは約指一本分が焦点距離だ。ジュエリーを宙に浮かせずルーペと中指で固定することがこつだ。焦点が合ったらルーペを出来るだけ利き目に近づけて視野を広げる。片目で作業を続けると疲れるので両目を開けて出来る訓練もしたい。
 ルーペが使えるようになったら、初めに刻印をチェックする。刻印情報を掲載しているカタログもあるが掲載されていない情報もあるので横着せずに自分で確認しよう。刻印には使われている貴金属の種類と品位、使われている宝石の石目方、メーカーやブランドのマークやシリアル番号等が打たれている。情報も大切だが丁寧に刻印されているかも重要だ。品質の高いジュエリーは刻印も綺麗なものが多いが、品質の低いジュエリーで刻印が綺麗なものは殆どない。メーカーの刻印は特定できなくても打たれていることでメーカー責任を取る姿勢が見えるのである物の方が比較的安心だ。白い地金はプラチナの場合とホワイトゴールドがあるが、ホワイトゴールドにはロジウムメッキが施されているので傷ついてメッキがはげる場合があることを承知しておきたい。ブローチやペンダントは傷むことが少ないので大柄なものはプラチナを避けて比重が軽いホワイトゴールドで作ることがある。
 紫外線ライトは簡易な鑑別に使えるので我々プロには必須だ。例えば、ダイヤモンドは蛍光を発するものが多く存在しており、稀にその中で特別に強いものが肉眼でも濁って見えることがある。蛍光の程度と肉眼で見たギャップを自分で確認してもらえば、殆どが影響のないことが分かる。そうすることでレポートにストロングブルーと記載があるだけで忌み嫌うことはなくなる。
 宝石の内部をルーペで拡大して善し悪しを見分けるのはプロの領域だが、表面の傷や内部に亀裂があるとか、宝石を留めている爪が浮いていて作りが不完全であるとか、一般の方でも分かることもあるので挑戦してもらいたい。その際にクロスで事前に汚れを拭いておくとゴミとの見間違いを防げる。
 石目方が分からなくともノギスや定規でダイヤモンドの縦横や直径を測ることで推定することができる。公式や早見表もあるのでステップアップしたい方は専門書を読むことをお勧めする。
 宝石は1カラット当たり幾らかが相場の基本になるので、例えばリザーブ価格(最低落札価格)をメインストンの石目方で割っても目安になるのでカタログに記入して品質や大きさとの関連性を見つけることも相場のヒントになる。
 今回はかなり専門的になったが、あまり肩肘張らずに出来るところから始めるぐらいで良いので、気軽に下見会に出向いてみよう。毎回必ず新たな発見があるはずだ。「習うより慣れよ」の精神で行ってみよう。

画像提供:毎日オークション

Brand Jewelry 2019 WINTER-2020 SPRING掲載