「宝石3」にも掲載されていて、以前より見たいと思っていた橋本コレクションのスカラベリングを、先日、手にとって見ることが出来ました。
このリングはおよそ3,800年前に作られ、副葬品としてピラミッドの棺に納められていました。
scarabée(スカラベ)とは、コガネムシ(フンコロガシ)のことです。「生まれ出てくる」「創られる」等の意味に解釈され、「再生」のシンボルとしてミイラの指につけられたと考えられています。
リングを見て最初の一言は、「大きい!」。
想像していたよりも、かなり大きいことに驚きました。
皆さんに分かりやすいように、実際に私の手に着けてみました。
私の中指は19番なのですが、まだかなり余裕があります。
橋本さんによるとこのリングは23番とのこと。楕円なのでもう少し大きいかも知れません。
そばで見ていた方から「ミイラの呪いがある」と脅かされましたが、時既に遅く、指にはめた後でした。思わず「仏教徒だから大丈夫」と訳の分からぬ反応をしてしまいました。
クローズアップすると表面が磨耗しているのが分かります。
これは使われて傷んだのではなく、気の遠くなるような長い間に、埃に含まれている石英粉が作用した結果と考えられます。
それにしても、何と美しいのアメジストでしょう。
グレー味がない明るい紫に昔の人もさぞかし感動したことでしょう。
角度を変えると色むらがあるのも自然の証です。
装身具として作られたものではないのですが、不思議な事に指に着けると色むらはなくなります。
拡大してみると、内部に穴を開けて金線を通しているのが分かります。
中心の部分で若干すれ違っている部分があることから、左右それぞれから開けていったと思われます。
その当時はダイヤモンドパウダーなど存在しないので、作業は砂とキリを使って少しずつ何ヶ月も要したはずです。
何千年も昔のジュエリーを、この手にとって見ることが出来た幸運な瞬間でした。