ジュエリーコンシェルジュ原田信之

原田信之 所有されているジュエリーの活用方法をアドバイスする株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリー JAAG(ジャーグ)の代表のブログ。オークションの査定や百数十回に及ぶ宝石の海外買い付け、ジュエリーのプロデューサーとしての経験を生かして、相続や売却、資産性のある宝石の購入のアドバイスをします。

価格

アントワープ市況 

アントワープの市況について、3回に分けて報告します。
プロ向きにまとめた報告書をベースにしていますので、説明の足りないところはご容赦ください。


9月の香港ショーでの好調な結果を背景にアントワープの業者は、売り上げに不安を抱いていません。
但し、続いている原石高に加えてユーロ高と金利の上昇がコスト高になって売り上げ増による利益を相殺しているため表情に明るさはありません。
参考までに、ドル金利は銀行によりますが7〜9%です。
その後、利下げがされていますが、いずれにしても低かったころに比べると上がっています。
もっとも金利としては常識の範囲です。

何よりもユーロ高が一番利益を圧迫しています。
宝石の取引はドルですが、費用はユーロです。
ドル対ユーロの為替レートの比率は、現在約1:1.45と過去最高の水準にあります。
2001年のユーロ安のころは1:0.85程度でしたので、ヨーロッパ経済の復活とともに毎年0.1程度上がり続けています。
ダイヤモンドの値上がりもこの差の範囲内は、為替レートによる調整と見ることが出来ます。
1カラット未満のサイズの原石の高騰は、上記のように需要よりもドル安がもたらしたものです。
しかし、大きなサイズは原石販売業者による入札制度によるもので、大きなサイズになればなるほど過熱している状態です。
1980年の投機による急激な高騰と下落を経験している業者は、取引から撤退しないまでも、在庫回転をより早めて、調整に備え始める人もいます。
但し、現在は世界的な二極分化による実需の様相が強く、急激な値下がりの可能性は少ないように思えます。



パライバ トルマリン

パライバタイプトルマリン(加熱)







久しぶりにドイツのIdar-Oberstein(イーダー・オーバーシュタイン)に来ています。
ご存知の通り、こちらは伝統あるカラーストンの研磨地です。
地理的な理由でアフリカ産の原石が集まりやすいのが特徴です。
もちろん、ブラジルの原石も集まります。

ネオンカラーが綺麗なブラジル産のパライバトルマリンも当初からイーダーのドイツ人が手がけていました。
初めに発見されたパライバ州の隣の州から同様のトルマリンの鉱山が見つかり、2年前ぐらいまでは少ないながらも供給が続いていました。
その後、その鉱山も底を着き始めたところにアフリカのモザンビークから少し淡めなパライバカラーのトルマリンが発見されて、現在ではその手のトルマリンの主流を占めています。

ブルーやブルーグリーンのネオンカラーのパライバタイプのトルマリンの殆どが加熱処理によって美しい色が引き出されています。
もちろん、加熱といってもルビー、サファイアの現在主流の1,800度に達するような高温ではありません。
1,000度未満の古典的な加熱処理です。

以前にもご紹介しましたが、美しいブルーやブルーグリーンに加熱して変化するのはバイオレット(青紫)のものです。
下の写真の左側が一番上の写真のようになります。
右のパープル(赤紫)のものは、加熱しても色が抜ける程度です。

無処理パライバタイプトルマリン








パライバ原石







こちらの原石のバイオレット(青紫)の部分が加熱によって下のような結晶の色に変化します。

パライバ原石 (加熱後)












パライバの価格は、その美しい色の魅力と少ない産出量によって引き続き上昇傾向です。
10カラットを超える大きなサイズの本当に美しいものは、5年前の倍以上の価格がついています。
その価格は、無処理のルビーの同サイズのジェムクオリティーを除けば、カラーストンの値段としては最も高い値段です。
長い時間をかけて価格が形成されたダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド等の伝統ある宝石の価格を凌ぐことには疑問を持ちます。
新しい宝石は、当初の「流行」から、引き続き人気が続いて「習慣」となり、更に歴史を積み上げて「伝統」になっていきます。
習慣になるには、ある程度の産出量が必要です。
産出が極端に少なくなるとデマントイドガーネットようなコレクターズアイテムになり、価格もそれほど上がりません。
更に硬度や耐久性が十分でないと人気がなくなり「習慣」になりません。

私は、上記の点から極端に高いパライバタイプのトルマリンは10年以上前から積極的に扱っていません。



続 カシミールサファイア

前回の続編です。

カシミールサファイア 22.66カラット クッションシェイプ
落札価格 $3,064,000  1ドル120円換算で3億6千7百万円

オークションのカタログによると、このサファイアは1886年に$2,200で購入されたそうです。
何と1,300倍以上になったことになります。
James Hill氏は、家族の財産の為に購入されたそうですが、120年後に1,300倍になったことは
正に思惑通りだったのではないでしょうか。


このオークションではこのほかにレッドダイヤモンドが特筆すべきでしょう。

1.59カラット ラディアントカット 
Fancy Purplish Red VS2
落札価格 $958,400 1ドル120円換算で約1億1千5百万円
     1カラット当たり$602,76 約7千2百万円

個人的には、レッドダイヤモンドの美しさは評価していませんが、ダイヤモンドの1カラット当たり価格のオークションでの記録はレッドダイヤモンドが持っていることからコレクターには格好のアイテムです。

カシミールサファイア

少し前ですが、4月25日にニューヨークのクリスティーズオークションに出品されたカシミールサファイアが信じられない価格で落札されました。

Kashmir Sapphire 22.66ct from James j. Hill













22.66カラット クッションシェイプ
落札価格 $3,064,000  1ドル120円換算で3億6千7百万円
            1カラットあたり約$135,000 約1千6百万円

サファイアのオークションの価格としては、過去最高の価格です。
同時に1カラットあたりの価格も過去最高でした。

このサファイアは米国のグレート・ノーザン鉄道(GN Great Northern Railway)の建設で有名な鉄道王ジェームス・J・ヒル(James J. Hill 1838−1916)が残した由緒正しい宝石の一つです。

実物を拝見していないので、美しさはお伝えできませんが、落札価格にはショックを受けました。
オークションの常で最後にどうしても落札したい人が二人残ると相場では考えられない価格になることが良くあります。
ただし、宝石は一つ一つが異なり、落札価格が相場になりますので、高い安いは安易に言うことが出来ませんが、これで、カシミールサファイア全体の相場が上がる気配がします。
既にここ2年はビルマ産の無処理ルビーは、相場が跳ね上がっています。
次は、カシミールサファイアかも知れません。

稀少性の高い宝石は、既に過熱状態です。
まだ上がり続けるか否かは分かりませんが、長い目で見れば、価格は上がれば下がります。
もっと長い目で過去を振り返れば、貨幣価値の下落によって上がり続けています。
何れにしても、宝石は投機で買うべきでありません。
あくまでも、身に着けて楽しむことが目的で、楽しんだ後にもある程度の価値が残ると考えると良いでしょう。

このオークションのハイライトはインドのマハラジャが所有していた天然真珠のネックレスのセットでした。
こちらも、オークションにおける天然真珠の価格では過去最高でした。
価格は、何と$7,096,000 約8億5千万円です。
こうなるとコメントのしようがありません。
天然真珠は、ある程度計画的に生産できる養殖真珠と異なり貝が偶然に作り出した稀少性の高いものです。
カシミールサファイアも天然真珠も稀少性が高いことに加えて氏素性が良いことが高値を生みました。


Profile

原田信之

Archives
ギャラリー
  • 「アヒマディ博士の宝石学」−宝石を科学的に解説ー
  • あなたの知らないオークションの世界
  • 「令和」記念ブログ-Diamond Pipeline 2017
  • 「令和」記念ブログ-Diamond Pipeline 2017
  • 「令和」記念ブログ-Diamond Pipeline 2017
  • 「令和」記念ブログ-Diamond Pipeline 2017
  • ライブドアブログ