ジュエリーコンシェルジュ原田信之

原田信之 所有されているジュエリーの活用方法をアドバイスする株式会社ジュエリーアドバイザー アンド ギャラリー JAAG(ジャーグ)の代表のブログ。オークションの査定や百数十回に及ぶ宝石の海外買い付け、ジュエリーのプロデューサーとしての経験を生かして、相続や売却、資産性のある宝石の購入のアドバイスをします。

宝石

査定、査定、査定。

毎日、ジュエリーの査定をしていますが、今日はオークションの査定がピークで、他の仕事が出来ませんでした。
査定は、稀少性が高くなればなるほど、時間がかかります。
見る時間も結論を出す時間も長くなります。
特に無処理のルビー、サファイアやファンシーカラーのダイヤモンドは査定が終わっても、何度も見直します。
宝石は一つ一つが異なるので、時間が経ってから見直すと違う要素が見えてくることがあります。
買い付けは、自分の美しさの価値観だけで判断しますが、査定は他の人が作ったジュエリーに価格をつけていきますので、より幅が広くなります。
今日は、ファンシーカラーの高品質なものに時間が取られました。

ジュエリーのプロデュースの仕事が溜まっています。
明日は出来るだけ、「石合わせ」をやりたいと思います。
「石合わせ」とは、デザイン図やラフスケッチに合わせて石を並べて、バランスを確認する作業です。
この作業が宝石を主体とする装身具では重要です。
宝石の美しさは3次元ですので、描いた絵だけでは分かりません。
平面に並べて、分からないときは粘土の上に置いて、角度を調節したり、立体的な美しさを追求します。
でも、この作業で美しい宝石の装身具が出来るわけではありません。
いくら「石合わせ」が思ったように出来ても、腕が良く、感性の鋭い職人さん抜きでは話になりません。

美味しい料理に良い素材は不可欠ですが、その素材を生かす腕の良い料理人がいなければならないように、ジュエリーも最後の決め手は、職人さんにかかっています。

本当に美しい素材も、一流の仕事が出来る人材も限られているので、ちょうどバランスが取れているのかも知れません。



頭で仕事できるようになるのはいつ?

 いつも楽しみにしている日経新聞のスポーツ欄の豊田泰光さんのコラムに「若いときは肉体が、そのうち経験が、最後は頭が(ヒットを)打たせてくれる」とありました。
これは、1958年に来日したカージナルスのスタン・ミュージアルが言ったそうです。
豊田さんは、以前にもこの言葉を紹介していますので、よほど印象に残っているのだと思います。

 この言葉はどんな仕事にも当てはまると思います。
私の場合は、20代、30代は朝7時過ぎから夜9時、10時過ぎまで、土曜日、たまに日曜日まで遮二無二働きました。
加えて、20代の半ばからはムンバイに年間10回、20代後半から30代は、アントワープ、バンコク等が加わりに年間10〜15回海外出張をこなしました。
宝石バイヤーとして油がのり始めた頃と日本のバブル景気が重なったために、常識では考えられない買い付け回数を短期に経験できたことは、運が良かったと思います。
週末にヨーロッパの8時間も時差があるところから帰って、時差ボケが解消した次の週末かその後の週末に再びヨーロッパに行くという生活を何年も続けることが出来たのは、体力があったからだと思います。
まさに「若いときは肉体が、」そのままです。

 40代からは、景気が悪くなったことから出張の回数は減っていきました。
体力的にも以前のような無茶が出来なるなってきましたので、不景気にも味方され、全くついています。
この頃から、ジュエリーの査定・仲介業務にも乗り出しました。
これは、それ迄の宝石の買い付けとジュエリーのプロデュースの経験があって初めて出来ることです。
まさに「そのうち経験が、」です。
50歳も近くなったこの頃ですが、まだ「経験」でヒットが打てそうです。

 いつになったら「最後は頭が、」になるのでしょうか。
この文章を書きながら、本当は、既に頭で仕事をしなくてはならない歳になっているのではないかと不安になりました。

 さて、皆さんは「肉体」、「経験」、「頭」のどの段階でしょうか。




宝石は余裕資金で購入

先日、ある宝石店さんが倒産しました。
その名前を聞いて、24年前の体験が昨日のように蘇りました。

大学を卒業したての私が現在の会社に入って間もない頃のことでした。
宝石の輸入卸が本業でしたが、小売の現場を体験する目的で、
宝飾品卸の取引先に依頼して、その得意先のお店で数日研修をしました。

ちょうど、そのお店は店頭催事の期間中で、たくさんのお客様が来店され、賑わっていたのを覚えています。
当時の私は、宝石のことは言うに及ばず、社会人としての経験もない若造で、接客の手伝いなど出来るわけがなく、ただただ、お店の方の邪魔にならないように後ろに控えているのが精一杯でした。

その時そこで見たものは、販売員さんがノルマを達成するために、ターゲットのお客様に電話をかけまくって来店を促し、分割払いを武器に執拗に販売する姿でした。
電卓の裏に信販会社の金利表が張ってあり、『月々に直すとこんなに小額な支払いで価値あるものが手に入る』と強調していました。
高齢のお客様も多く、年金だけで生活している方もいらっしゃいました。
店員さんの中には年金がいつ入るか知っている人もいて、それに合わせた支払いを薦める光景にも出くわしました。
既に以前に組んだクレジットを支払い中のお客様に対しても、言葉巧みに更なるクレジットを薦める強者もいました。

悲しいことに、ノルマが達成できない販売員さんは穴埋めに自分でクレジットを組んで購入していました。
その額が月々の給料に近いと嘆いている人もいて、この方々も被害者なのだと分かりました。

この時に目にしたことが、ずっと私の頭から離れることはありませんでした。
実は、これ以後このような販売に立ち会うことはなかったのですが、初めての小売体験が強烈過ぎて、思い起こす度に憤りを感じていました。

もう、お気づきですね。
このお店が倒産したのです。
報道でご存知だとは思いますが、クレジットを使った強引な訪問販売等が社会問題化し、信販会社が審査を厳密にするようになった結果、この手の営業が成り立たず倒産が相次いでいます。

信販会社や小売店に世間の非難が浴びせられていますが、お年寄りのような弱者を別にすれば、無理して買う方にも問題があります。

生活に必要なもの−家や場合によっては車−の購入に無理のない範囲でクレジットやローンを組むことは致し方ありませんが、宝石は、無理して買うものではありません。
何かの記念に思いを込めて購入したり、プレゼントするものです。
宝石は、余裕資金で購入してください。
余裕資金で購入した宝石は、人生に潤いを与えてくれます。

余談ですが、ある老舗の宝石店の社長さんにクレジットの比率を伺ったことがあります。
結果は、殆どないそうです。
このお店は、商品も接客も一流で業界でも最も尊敬できるお店の一つです。
無理して販売しない姿勢が全てに表れるのでしょうね。
皆さんもお店選びの目安にしては如何でしょうか。

ジュエリーの大衆化と宝石の処理

ルビー、サファイア、エメラルドのように伝統的な宝石はそもそも綺麗なものは少なく高価です。
だからこそ「宝石」です。
それが、ジュエリーの大衆化でその需要に応えるために本来価値の低い低品質なものに加熱含侵をして供給を増やしたのが宝石の処理の歴史です。
処理されたものはもともと宝石品質ではないのです。
反対に言うと、宝石品質でしたら処理は必要ありません。

今までは、情報が足りないため、処理と無処理の価値の差がはっきりしていませんでした。
処理の技術が進んだ結果、供給が飛躍的に増え、無処理のものとの価格差が広がり始めています。
この差は更に広がり、処理する前の品質に見合った価値にいずれ収斂すると思います。

20年前は、そこそこの品質でも3カラットを超えるルビーはなかなか見ることが出来ませんでしたが、今はかなり安い価格で巷に溢れています。
加熱等の処理技術が進み、出現率を圧倒的に上げています。

エメラルドは10年以上前から含侵処理が著しくなり、ルビー、サファイアよりも前に価格が既に下がっています。

正直なもので、オークション等の再流通市場では既に大きな価格差がついています。

無処理で美しいものは限られているので、現実的には処理されたものが商品の中心になります。
処理されたものを購入されるときには、価値に見合った価格であるか注意する必要があります。
もちろん正確な情報開示がされていることが前提です。

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